旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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6.全館貸切プラン
これから注目すべき旅館業界のキーワード12
全館貸切プラン
1~5、特に3、4、5のキーワードを前提として考えると「全館貸切」の考え方も大きく変わってくるはずです。
ここで重要なのが、「利用人数×単価=総収入(売上)」という料金設定から、「総収入(1日当り損益分岐点)=利用人数×単価」と逆の捉え方をして、貸切対応の引き受け可否を判断するということです。つまり、1日の売上がいくらあれば利益を計上できるか? その収支バランスを仮に想定して、「貸切の場合の必要売上」を算定してみてください。それが貸切対応を行うかどうかの判断基準となります。
この際に重要なのは、旅行動向が個人化に大きく転換しているということです。従来なら、50室の宿の収容キャパは250~300名、100室の場合は500~600名と考えてきました。「2畳に1人の割合で寝ていただく」前提の収容力です。しかし、今では1室2名が基準、大きな部屋でも4名以上の部屋割りをすると評価が下がる傾向にあります。50室でも最大150名、100室は300名が最大の受け入れ人数として捉えていかなければならない状況にあります。昔と違い、人の布団の上を歩いて移動しなければならないような睡眠環境は耐えられないという人が増えてきているのです。
このような状況下で、「利用可能な」人数を基準に判断していては、かえってチャンスを逃すことになります。50室の場合、100名以上なら貸切利用を引き受けるくらいの試算をすべきではないでしょうか? ただしこの場合、利用人数を条件とするのでなく、貸切利用の最低総額料金を設定し、告知することです。仮に300万円の貸切料金を設定した場合、100名利用は1人当り3万円の単価になります。販売のポイントは「1泊2食分の料金ではない」ということをしっかりと示して、それを理解してくれるお客様、団体幹事等を開拓していくところにあります。
この利用料金の中には、1)館内の全ての施設をお客様のために使えること、2)時間・スケジュール組みも自由にできること、3)料理の提供方法も一括でも分散でも選択できること、4)そして、部屋割りをゆったり配すことができること(100名だとすると1室2名換算です)、5)ほかのお客様と混在しないこと(コロナ禍の影響により、このポイントは重要な判断材料になっています)などが含まれるのです。更に、オールインクルーシブの発想を採り入れ、パブリックを開放し、飲み物も飲み放題、客室冷蔵庫なども含んだ料金とするなど、魅力アップのための材料はたくさんあるのです。団体の幹事にとってはありがたい商品であると私は確信しています。
現に、コロナ禍の影響により、各地各施設ともに修学旅行やオリエンテーションなどの目的の学生団体、会社の集合研修、組織団体の大会などの問い合わせ、実施が増えてきています、しばらくはこの傾向が続くはずです。自館のオリジナリティを加えた「団体貸切プラン」を再度造成して、団体、会社関係への販売・告知チャネルへ乗せてみる価値は十分にあるはずです。現に、修学旅行では、単価アップの報告が次々と届いています。海外や航空機を使った国内遠距離への修学旅行を行っている学校はたくさんあります。修学旅行の予算が1万円前後に抑えられているのは、旧来の感覚で捉えているからです。送客する旅行社側、受け入れる施設側共に、固定観念を捨て、新しい団体旅行のニーズを開拓する必要があります。
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