株式会社リョケン

旅館経営の知恵

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モチベーション(4)

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

人のモチベーションを高める方法として、 (1)やりがいのある仕事や役割を与える (2)達成感を味わわせる (3)褒める、認める、位置付ける (4)成長を実感させる―四つについて見てきた。 最後に「チーム活動」について考えたい。

チーム活動

これはここまでに挙げた四つとは少し趣きが違う。マズローの欲求5段階説になぞらえれば、(1)~(4)が、最高次の「自己実現欲求」か、その次の「承認欲求(尊厳欲求)」であるのに対し、「チーム活動」は3段階目の「社会的欲求(所属と愛の欲求)」に位置付けられるかと思う。またハーズバーグの言う「動機付け要因(満足要因)」にも、これに当たるものはないが、現実に仕事モチベーションを高める方法として、あえてこれを加えたい。

 

会社は組織であり、その意味ではもともとチームプレイをやっていることになる。しかし、では「チーム」として意識されているかというと疑問だ。

 

野球やサッカーなどの団体競技をイメージしてみよう。チームの勝利を目指して、選手一人一人が力の限りを尽くしながらも、互いに助け合い、励まし合う。そこには一体感があり、分かち合う感動さえある。

違いはどこにあるのか? スポーツ競技では「勝つ」ことが強く意識される。勝てば喜びがあり、負ければ悔しい。戦いは常に勝つか負けるかの緊張感の中にある。この緊張感や喜びをメンバーで共有することがチームプレイの醍醐味(だいごみ)だ。

 

こう考えると、ポイントは「目標の明確さ」と、それが達せられたときに味わえる「満足の共有」にあると言えそうだ。

 

筆者が関わっているある旅館では、「改善メモ」という活動を全社的に推進している。どんなに小さなことでもいいので、現場の改善につながることを行って、結果を「改善メモ」として提出すれば奨励金が出る。そして毎月、経営幹部がAからEまでの効果度ランク付けを行い、ランクに応じて報奨金も大きくなる仕組みだ。ところが現実には多くの部門で、この活動があまり活発化しない…。

 

ここに「浴場」という部門がある。大浴場周りの清掃やボイラー管理などに関わる部署で、どちらかと言うと地味な業務だが、ここに意欲的に改善メモを出す長が現れた。機械の使い勝手や掃除のやりやすさ、脱衣場の美観など、いろんな課題を次々に見つけてはせっせと実行し、改善メモを出す。それに見ならった彼の部下たちも、次第に出すようになった。

 

聞くと、浴場係の事務所には、部門としての合計提出枚数を貼り出しているという。なるほど…「では今度は評価ランクを点数化して、その合計点数も掲示してはどうか」と勧めたところ、翌月から早速行われた。年に1度行われる「年間表彰」ではこの2、3年、少なくとも提出枚数において断トツのトップである。

この部門にとって、他部門を圧倒する数の改善メモを出すこと、またなるべく高いランク評価をもらって累計点数を高めることが、明らかに目標になり、プライドになっている。

 

チーム活動は、うまく機能すればチーム人数分の足し算ではなく、掛け算でパワーが発揮される。

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2019年6月に観光経済新聞に掲載されたものです。

 

 

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