旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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磨け! 独自価値(8)
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
もう一つの「機会」は、新たな経営展開に弾みをつけるような「出会い」である。
独自価値づくりの着眼点(続き)
(ロ)出会い
旅館にはいろんな人が「向こうから」お金を払って訪れてくれる。そしてこうした人の中にはしばしば、特別な才能や人脈を持った人がいる。あるいは、もろもろの組織団体、海外の人や団体、有益な技術、企業やお店、食材・商材、新たな仕入れルートにつながりのある人など…。
旅館は、数あるサービス業の中でも滞在時間が異常に長い。食事をして、アルコールが入れば、普通ではとても近づくことさえできないような人と、腹を割った話もできる。これほど人との「出会い」に恵まれた商売は他にない。つまりそのこと自体が旅館にとって「強み」といえる。
こうした出会いの中に、自館の独自価値づくりにおいて生かせそうなものがあれば、積極的に関係づくりを行っていくことである。つながりができ、活用できる状態になれば、その時点で「機会」は自社の経営資源、すなわち「強み」に変わる。
ところが筆者が見る限り、ほとんどの旅館では宿泊客を「その日の売り上げの対象」としてしか見ていない。つかまえれば独自価値のタネになるようなものを、あたら見送っているに等しい。実にもったいないと思う。
「出会い」は、そのままの姿では必ずしも自社の機会として映らないかもしれない。しかし、常に何か糸口を見いだそうという意識を持ち続けている人にとっては、ピンとひらめくものがある。「アンテナを張りめぐらす」とはそういうことだ。
そうは言っても、会ったその時には、生かし方がすぐに見つからない場合が多いかと思う。そこで一つ提案したいのは、「出会い」のデータベースづくりである。
データベースといっても、大げさなものではない。その日会った人と、ひとまず名刺交換しておいて、翌朝、これをエクセル表に記録するというものだ。最も簡単な方法としては、縦列に日付、その横に会社や団体名と名前を書き込む。かたや横列の一番上の行に、例えば「料理」「魚仕入」「芸能」「郷土史」「スポーツ」…など、適当な「分野名」を入れて、その人ごとに、当てはまる枠に○印(後で手軽に抽出するためには「1」の数字)でも入れておけばよい。
一方の名刺。整理のし方は人によっていろいろだろうが、このデータベースを生かすためには、日付順に並べておくことだ。こうしておけば、エクセル表の日付からすぐに見つけ出すことができる。また表にいちいち住所や電話番号など書き込む必要がない。
何か必要なヒントを得たいと思ったとき、その分野に該当する人を選び出して、「これだ」という人があれば名刺を手繰って連絡をとってみるとよい。
「機会」は経営環境、つまり自社の外にあることだが、それを経営に生かそうと思ったら、「外の世界のこと」「動かしがたいこと」としてただ見ているだけでなく、それに対して能動的な関わりを持つことである。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2018年12月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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