旅館経営の知恵
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お届けする経営のヒント-
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磨け! 独自価値(3)
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
独自価値とはどういうものか、またその捉え方について、「それ以外のもの」との対比でお伝えしてきた。しかし、まだ言葉の意味に毛の生えた程度のことを述べたに過ぎない。そこで独自価値というもののイメージをもう少し浮き彫りにしていきたい。
独自価値は競争の中で埋没しない
独自価値は競争の土俵を変え、「別のもの」として見られる有利な条件を作る。それを求める人にとって、価格は二の次となる。
ただし、ここで大事なことは、「真に独自であるかそうでないか」ではなく、「独自のものとして認識されるかどうか」だ。もちろん、それがまったくよそに存在しないものなら言うことはない。そういうものもあるだろう。しかし仮にそうでなくても「独自価値」とすることはできる。すなわち、それ自体はありふれた商品要素でも、そこにおいて圧倒的なパフォーマンスとイメージを築き上げれば、独自価値として突き抜けることができるのである。
阪急阪神第一ホテルグループが各地に展開しているビジネスホテル「remm」。この名は「レム睡眠・ノンレム睡眠」から取ったものという。ホテルのメインキャッチフレーズは「眠りをデザインするホテル」、コンセプトを表すフレーズとして掲げているのが「『泊まる』は『眠る』」だ。そして快適な眠りと目覚めのためのこだわりとして、オリジナルベッド、選べる枕、マッサージチェア、レインシャワー、アメニティ、客室の造り、朝食、館内外のデザインテイストといったものまで動員して考えていることをアピールしている。
「remm」さんには失礼になるが、これら一つ一つを部品として見れば、別にそれほど珍しいものではない。しかし、よそが「そこそこ程度」にやっていることも、こうして一つのコンセプトのもとに「感じられる価値」にまで高めることができれば、立派な独自価値となることを示している。「突き抜ける」価値づくりである。
独自価値は選ばれる、指名される理由になる
真にお客さまにとって有益なものであれば、独自価値は「選ばれる理由」になる。2回目以降は「指名される理由」となり、他をもって代え難い宿として長く愛顧される期待が持てる。またさらに、同じ志向を持つ仲間へ「紹介される理由」にもなる。
長野県・鹿教湯温泉にある「斎藤ホテル」さんは、自前でオリジナルの着地型観光ツアーを連日主催している。これらに参加すれば1週間滞在しても飽きない仕掛けだ。このツアーこそが「斎藤ホテル」さんの独自価値であり、これを目当てに4泊、5泊と滞在するお客さまが、ざらにいる。
滞在の間にスタッフはお客さまの顔と名前をすっかり覚えてしまう。そして朝食レストランでお迎えの際、「○○さま、おはようございます! 今日は○○へお出かけですね。いいお天気で良かったですね」などと笑顔で語りかける。高齢者を中心とする利用客にとって、これはまさにくぎ付けのファンになる価値といえる。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2018年10月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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