旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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生産性向上の大局観(9)
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
「損益に占める人件費率は低く、1人当たりの給料は高く」…これが健全な発展を遂げる企業のあるべき姿だ。
生産性の向上は誰のためか?
これを両立させるためには、高い生産性を実現してもうけるしかない。そしてそのためには、もろもろの「現状」を変えていく必要がある。図式に表わせばこういうことだ。
・会社の発展と社員の幸福は「相互に」因果関係にある。
↓
・それらの実現には高い生産性が必要。
↓
・そのためには変革しなければならない。
経営者はまずこのことを「経営観」として意識に刻み、またその軸をしっかり持つことが大切だと思う。
ただしこれは、経営者1人だけが分かっていれば良いというものでもない。その構図を社員にも得心してもらい、「同じ船に乗っている」という認識を共有する必要がある。ところが、これがうまくいかない場合が非常に多いのも現実だ。なぜか?…それは社員の「働き」と経営活動―その結果である利益や財務状況―が結び付けられていないことによる場合が多い。
ここで「公開、参画、配分」というキーワードをお伝えしたい。社員に経営の数字を「公開」すること、それを前提に社員を経営に「参画」させること、そしてその成果を社員に「配分」すること…これこそが「経営観」を共有する源泉であり、「ヒト」資源に負うところの大きな旅館において、経営の発展、衰退を左右する重要なカギであると思う。念のため付け加えるが、ここでいう「経営の数字」とは、売り上げだけではない。「利益」である。
このような仕組みがまだ整っていないところでは、実現課題として検討されることをお薦めしたい。またすでに出来上がっているところでは、それが意図通りに機能しているか、さびついて動きが悪くなっていないか、点検してみていただきたいと思う。そして改めて「生産性の向上は何のためか? 誰のためか?」、この問いを社員に投げかけ、その必要性を説こう。それが生産性向上のエンジンとなる。
経営を成功に導くのは単発のアイデアではない。アイデアを次々と生み出し、それらを具現化していける主体的、持続的な組織風土なのである。
望ましい経営は、ただ「そうなりたい」と思っているだけで実現できるほど甘いものではない。また今の世の中、「一丸となって頑張る」というだけでは残念ながら足りない。経営者も社員も頭をフル回転させて「より良い」を考え、目標に向かって精一杯の努力をしていく必要がある。
ただしこれを「苦しい」と思ってやっていたら、これほど苦しいことはない。「楽しい」に変える必要がある。これをするのが経営者の重要な役割である。そのために進めていただきたいことは三つ挙げられる。
一つは、右に述べた経営観とその共有のための仕組みづくりをすることである。
二つ目は、ビジョンや戦略構図を描き、未来にワクワクするような希望を描くことだ。
そのためには経営者、とりわけトップはいつでも誰よりも会社の未来を考えている必要がある。
もう一つは、商売と仕事に対する誇りを持たせることである。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2018年8月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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