旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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生産性向上の大局観(6)
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
「また2人辞めてしまいました」「募集をかけても応募がありません」…近ごろこんな悲鳴がほぼ全国で聞かれるようになった。
急げ! 構造変革
本コラムの第1回で「この人手不足は景気変動ぐらいの短期的な現象だけではない」と述べた。今の日本は、産業構造を支えるだけの労働力人口が絶対的に不足しているのである。そして今、3年余り前の当時と比べて、事態はさらに進んだと感じられる。しかし現在の状況は、まだ序章に過ぎない。これからさらに深刻化するのだ。
「悲観論からは何も生まれない」とは弊社創業者の遺訓である。いたずらに悲観論をあおるつもりはないが、労働力の問題は楽観していて何とかなるものではない。この先の労働力不足の進行スピードは、おそらく大方の人が思っているイメージよりはるかに速い。そして旅館のほとんどは、その波をまともに受けることになる。
そこで二つのことを早めにお考えになるようお勧めしたい。一つは「生産性の向上」、もう一つは「その場しのぎでない人材確保策」である。「人材確保策」についてはいずれ改めて触れるとして、今回は標題にも掲げている「生産性向上」に焦点を絞る。
以前にも述べたが、生産性を向上させるには二つの取り組み領域がある―売り上げを高めること、そこに投入する労務コストを低く抑えること―これは同じだ。ただし今日、これらを緩やかに進めるだけの時間があまり残されていない…。
今後の急速な労働力減少に対処していくには、「商売と業務の構造変革」が必要になるだろう。その検討方向として以下の五つを提言したい。なお、あえて「できる・できない」の議論、またそれぞれ「どうやるか」についての掘り下げは省かせていただく。
(ⅰ)店と商売の価値を高める
価格競争でなく、付きもの競争でもなく、お客さまが買いたくなる価値づくりに資源を投入する。特にブランド価値を高めることに重点を置く―
(ⅱ)ビジネスモデルを変える
提供する価値を変える。顧客を変える。販売チャネル・販売方法を変える。仕入れを変える―
(ⅲ)業務プロセスをゼロベースから見直す
やる価値のある業務かどうか。別のやり方、別の価値実現方法はないか。業務を統合、再編、兼務できないか。より少ない人数で運営するにはどうしたらよいか―
(ⅳ)機械化・自動化・システム化を進める
機械に置き換えることが可能な業務は、機械化を積極的に検討する。また情報システム投資により情報の流れを変え、より合理的な現場運営を実現する―
(ⅴ)人の能力と使い方を高度化する
社員一人一人に、これまでよりも高いレベルの仕事をしてもらうようにしていく。より高度な判断、より的確な業務遂行、よりアグレッシブな行動、そして変革を求めていく―
単なる悲観は「くよくよ嘆いて何もしない」ことであって、危機感とは違う。正しい危機意識を持ち、打つべき手を打ってこそ、道は開けると思う。だから少なくとも、今すぐ真剣に考え始めることだ。とにかく急いでいただきたい。そうでないと間に合わなくなる。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2018年6月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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