株式会社リョケン

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生産性向上の大局観(2)

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

労働生産性とは、従業者1人当たりに生み出された付加価値額である。近ごろ「働き方改革」などの議論でよく引き合いに出される統計情報として「労働生産性の国際比較」(※1)というものがある。これによれば、2016年のわが国の労働生産性(GDP÷就業者数〈または就業者数×労働時間〉)は、全産業ベースで年間81・777USドル(この時点のレートで834万円)。OECD加盟35カ国中、21位の低位に甘んじている。

生産性の格差

では「宿泊・飲食業」の生産性を欧米主要国と比べるとどうか? 「1時間あたり付加価値」をアメリカ、ドイツ、イギリス、フランスと比較した研究(※2)がある。2015年におけるそれぞれの国の「宿泊・飲食」産業の生産性を100として、これに対するわが国のそれは、対アメリカ38・8、対ドイツ57・0、対イギリス90・2、対フランス41・4という数字である。

 

一方、わが国における業種別の生産性については、「主要産業の労働生産性水準」(※3)という統計がある。これによれば、2016年の「宿泊・飲食サービス業」の平均は313万7千円。農林水産業まで含めた「全産業」平均は799万2千円であり、これの半分にも満たない。

ちなみに、日本旅館協会の「営業状況等統計調査」によれば、2016年度の旅館の労働生産性は全体平均で789万円となっている。ただしこの数字は「労働生産性=売上総利益÷就業者数」として算出されている。現実には売上総利益から水道光熱費や販売手数料など、諸々の経費を差し引いたものが「付加価値額」となるので、実際の数字としては冒頭に示した「宿泊・飲食サービス業」の平均に近い値になるかと思われる。

 

 

グラフを見ると、業種によってあまりに大きな開きがあるので、「本当にそうなのか?」と疑いたくなるが、業種による事業構造の違いもある。例えばこの中で異常に生産性の高い「不動産業」や、これに次ぐ「電気・ガス・水道」は、いわゆる「資本装備率」が高く、そのコストをまかなうために大きな付加価値を必要とするので、一概に労働生産性だけで語ることはできない。(もっとも、宿泊業も資本装備率は高い方だが)いずれにしても「宿泊・飲食サービス業」の労働生産性は他業種一般と比べて低いと捉えられる。

 

さて、こんな数字ばかり面白がって挙げているわけではない。見ていると暗たんたる気分になってくる。なぜそうなのか? これを何とかするにはどうすればいいのか? 小欄のタイトルは「旅館はもっと良くなるべきだ」である。その主旨に立って、次回はこの問題を掘り下げてみたい。

 

※1および3 日本生産性本部

※2 同右、滝澤美帆東洋大学教授「産業別労働生産性水準の国際比較」

 

 

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

※当記事は、2018年4月に観光経済新聞に掲載されたものです。

 

 

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