株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

読んで見直す 料理提供の基礎(3)
料理提供の実務

接客サービスの品質向上

前回に続き、 料理提供の実務を見ていきましょう。

1.提供の始め方

お食事中のお客様にサービスを受け容れていただくために、タイミングを見計らうことが大切です。

まず、テーブルの半歩手前で立ち止まります。(和室の場合は、ひと膝手前に座ります。)
お客様の会話の邪魔にならないことを確認して、会釈をして(草の姿勢で)、「失礼いたします」あるいは「焼き物をお持ちいたしました」などと声をかけます。この時、どちらのお客様から対応するのがよいか、空いている器はないか、お持ちしたお料理はどこに置いたらよいかを確認します。

料理を出すことばかりを気にして、片手に料理を持ってどこに置けるかおろおろしているようではいけません。
召し上がりやすく、おいしそうにお出しするためには、「置く場所をつくる」ことが先に必要です。

 

 

2.提供の手順

① 盆を脇テーブルや畳に置く
* 椅子席などで盆を置くことができない場合は、やむを得ず、左手に盆を受けて、片手で料理をお出しすることになります。

② 空いている器があれば声をかけて下げ、お持ちした料理を召し上がりやすく置く場所をつくる

③ 料理の正面を正して置き、片手をかざして、料理名などのことばを添える

④ お飲み物の様子に気を配り、こちらからおうかがいする

「お飲み物は足りていらっしゃいますか」

⑤ 次の料理(献立名・タイミング)について伝える
料理にことばを添える時は、おひとりおひとりでなく、みなさまご一緒にお伝えすることもあります。伝わりやすい方法を工夫しましょう。
特に、召し上がり方の説明をわかりやすくするためには、予め説明のことばを検討し準備しておくことが望まれます。

 

 

3.提供の終わり方

料理を出し、ことばを添えて、それだけで席を下がってはいけません。よく見かけるのが、係の人が背を向けたとたんに、お客様から「すみません」と声をかけられるケースです。

 

「スプーンはどこにありますか」「これはどれにつけて食べるのですか」と質問され、係の人の表情には「さっき説明したのに‥」という気持ちが見え隠れしています。
説明したことが伝わったかどうか、確かめなかったことがいけないのに、迷惑そうな態度はもってのほかです。

 

言い忘れていることがあったり、お客様によって知りたいことが違うのですから、下がろうとする前に「今下がっても、お客様にご不自由はないだろうか、困っていることはないだろうか」と気にかけてみるのが当然です。

提供が一通り終わったら、半歩下がり(和室ではひと膝後ろに下がり)、会釈をして(草の姿勢で)、その時にしっかりお客様の状況を確認します。
何かあれば、すぐに説明を加えたり、お手伝いをしましょう。大丈夫だと思ってから「失礼いたします」あるいは「この後、揚げ物をお持ちいたします」などと言って、下がります。

 

1回1回の対応のけじめをきちんとすることで、サービスの品質が高まります。

 

 

4.してはいけないこと

お客様においしく楽しくお食事をしていただくために、私達が守りたいルールがあります。どうしてもそのとおりにできない事情も時にはありますが、気にかけている態度やことばがあれば、お客様の理解を得られるものです。

*料理の扱い
① 口のふれるところに手をかけない、指先を曲げて器の内側にかけない
② ふたのかかっている器でも上からわしづかみにしない
③ お椀や蓋物は提供する際、勝手に蓋を取らない

 

*器の下げ方
① だまって器を下げない
② 器に手をかけたり手に持ってから、下げてよいかどうかのお尋ねをしない
③ お出しする料理と空いた器を、それぞれの手に持って取り替えるような動作
をしない
④ お出しする料理がのっている盆に、下げる器をのせない
⑤ 料理が残っている器を重ねない
⑥ 残っている料理をひとつにまとめない
⑦ お椀を重ねない、高さのある器を3つ以上重ねない

 

*提供動作
① 提供の順序は、お客様の関係や席次を無視してはならない
② お出しする料理で器を押しのけない
③ 盆をテーブルにのせない
④ 召し上がりにくい場所に無神経に料理を出さない
⑤ 音を立てない
⑥ 和室(宴席・座卓席)では、立ったまま、あるいは中腰で提供しない
⑦ お客様に話しかけられた時、手を止めず顔も上げないまま返事をしない

 

 

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