株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

業務効率化への取り組み(33)業務を減らすⅳ

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

サービス項目を維持したままでの業務効率化には一定の限界がある。そこで「当館スタンダード」として行っている日常的な業務についても、見直しの目を入れてみたい。

(ⅳ)客室のセッティング

浴衣やアメニティ類は、その日に利用するお客さまに合わせて客室にセットしておくのが一般的かと思う。これの手間数を減らす方向は2通りある。

 

 

イ)セットの簡略化

その日の利用人数に関係なく、常に部屋ごとの最大人数分(浴衣ならサイズ別の定数)をセットしておく「MAX対応方式」である。ただしアメニティ類は、使わないのに持ち帰られてしまう可能性がつきまとうので、一概にこの方式が良いとは言えない。
浴衣は、各部屋で「定数」に戻すために足し置くべき数を把握するのに、残ったものの数を数える必要があり、これが少々厄介である。さらに部屋が「喫煙可」である場合は、使わなかった浴衣にもタバコ臭が着いて使い物にならなくなってしまうので、それを防ぐ必要がある。
この2つの問題への対応としては、服入れの中などに多段引出しを据えて、その中にサイズ別に収納する方法がある。こうしておけば臭いは着きにくく、数の把握も比較的容易である。また数とは関係ないが、丹前や羽織はたたまず、服入れのハンガーに掛けておくようにする方法がある。これだけで、おそらく1着につき数十秒かかるであろう作業が、ほんの一瞬で済む。

 

 

ロ)セットしない

浴衣やアメニティ類セットの手間を省くもうひとつの方向は、「セットしない」である。フロント付近にまとめて置いておき、チェックイン時に必要な分だけお客さまに持っていってもらう。持ち運びのために、手ごろなカゴか袋を用意しておくとよいだろう。各部屋にセットするのに比べ、手間は相当減らすことができる。

ただこの方式は言わばセルフサービスとなるので、導入にいささか抵抗を感じる方も多いかと思う。しかしやってみると、お客さまからの不満の声はまずない。丁寧さを表現するなら、選んだものを、部屋へのご案内の際にスタッフが持っていってあげるやり方もある。
お茶などを淹れる便宜のために、保温ポットや電気湯沸しポットにお湯を満たして部屋に置いているところが大半かと思うが。最近はポットを「電気ケトル」に替える例もけっこう見られるようになった。湯を沸かす手間、ポットに湯(水)を入れる手間、それらを運ぶ手間が省けるだけでなく、使うかどうかわからない電気ポットを常時保温しておくことによる電気代の節約にもなる。

 

 

ハ)見直しの目を

この他にも、客室で「セットするもの」は多い。スリッパや草履、茶器、茶菓子、コップ、ティッシュペーパー、トイレ周り、各種案内印刷物…

いずれもそれなりに必要なものであり、簡単に無くしたりすることはできないだろうが、なにしろ毎日のことだ。省けないか、まとめられないか、手間を省くセット方法がないかなど、ぜひ検討してみていただきたい。旅館によっては、ちょっとしたことで全体としての作業時間を30分や1時間ぐらい短縮することは容易に可能かと思う。

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

 

※当記事は、2018年2月に観光経済新聞に掲載されたものです。

 

 

 

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