株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

業務効率化への取り組み(32)業務を減らすⅲ

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

飲み物のストックは通常、会食場近くのパントリーに冷蔵庫などがあって、そこに置かれている。そしてお客さまからのリクエストに応じて、会食場とパントリーの間を行ったり来たりするのが一般的だが、この動きをなるべく少なくしたい。    

(ⅲ)飲み物の用意

スタッフの「総移動距離」は、

「ストック場所までの距離(会場内を含む)×取りに行く回数×往復×スタッフ人数」である。

仮に4人の係が40m離れた場所へ平均5回取りに行くとすれば、延べ1600mとなる。

「総移動時間」は、「総移動距離÷歩行速度(少し速めに歩く想定で毎分80~100m程度)」だから、右の例では延べ16~20分が「移動だけ」に費やされる勘定になる。

 

まず、これはたいていの旅館で行われていると思うが、宴会やグループ会食で最初に付けておくべきものはあらかじめ聞いておき、ほぼ間違いなく出るものを含め、極力事前にセットしておくようにしたい。

またそれ以外の飲み物も、幹事や添乗員の許可を得て会場に陳列させてもらうことを考えよう。このやり方は、飲み物売り上げに熱心な旅館で販売促進のため以前から行われていたものだが、今日ではむしろ労働力の効率的な運用という意味が大きい。

 

飲み物の事前段取りが望ましいのは小グループや個人客でも同じである。

生ビールを初めから用意しておくわけにはいかないが、事前に伺っておくだけでも段取りはだいぶ違う。お客さまが席に着いてからメニューを出して飲み物を伺っていたら、へたをするとそれだけで2往復。選ぶ間の待機を加えると、けっこうな時間がとられることになる。

また日本酒やワインなどの出る頻度の少ない銘柄は、用度倉庫など1カ所にまとめて保管されている場合も多い。これを着席後にそこまで取りに行っていたら、①時間②労力③お客さまの満足の三つの面でマイナスだ。

 

食事のスタート直後は、それでなくともスピーディーにやらなくてはならないことが多いから、飲み物で手間取っていると、お客さまを待たせてイライラさせることにもなりかねない。だから飲み物の注文はチェックインの際、夕食時間の確認と合わせて伺っておくことが望ましい。

 

飲み物ストックを、今よりも宴会場・会食場に近い場所に持ってくる余地がないだろうか。

食事会場がいくつかに分散している場合は、スペースが許せばそれに併せて飲み物ステーションを増やすことも検討したい。中には宴会場内に冷蔵庫を据えて、お客さまにそこから自由に持っていってもらうスタイルをとっているところもある。冷蔵庫の台数が増えれば補充や管理の手間も多少増えるが、会食時の運びの頻度を考えればはるかに小さい。また冷蔵庫の購入費用も、長い目で見れば人件費や労務負担の軽減で元がとれるはずだ。
こうした工夫により、飲み物を取りに行くために料理出しが遅れたり、満足な接客サービスができないといった問題も、完全にとまではいかないがだいぶ解消されるだろう。

 

 
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

 

※当記事は、2018年1月に観光経済新聞に掲載されたものです。

 

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