株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

業務効率化への取り組み(31)業務を減らすⅱ

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

席セットの組み替えの中でも、いわゆる「どんでん返し」は非常に大きな労務負担である。できればこれをなるべくやらずに済ますようにしたい。    

(ⅱ)どんでん返しを減らす

最近では、和式宴会場で使える畳用の椅子、テーブルを備えるところも多くなってきた。グループに高齢の人が含まれる場合も多く、たいていのお客さまは足が楽な方を好むので、椅子、テーブル形式が選ばれるケースが大半かと思う。中には、宴会といえば従来のお膳、座布団形式しか頭にないお客さまもいる。大きな宴会であればあるほど、幹事さんは形式の選択に迷うことになる。芸妓やコンパニオンが入る場合は特にそうだ。そして、しばしばお膳、座布団スタイルにしておくのが「無難であろう」との判断に至る。

 

かくして現場では、椅子、テーブルと座椅子、座布団の入れ替え作業が日常的に発生することになる。昔からやっていることなので、何の疑念も抱かず対応しているところも多いが、この作業はまったく価値を生まない。その無駄を「減らす」ことを考えたい。

 

スタイル確認の際、「どうしても」という要望でない限り、なるべく椅子、テーブルスタイルに誘導するようおすすめするだけで、余計な仕事をだいぶ減らすことができる。

そしてポイントは、「幹事、旅行会社、営業」…この三者の「言いなり」にならないことだ。こう言うと反発の声も上がりそうだが、この3者に対しては、ある意味で現場サイドからの「教育的提案」をしていくべきと考える。彼らはしばしば「思惑」で判断している場合があるからだ。「こちらがおすすめ」であることをきちんと説明し、お客さまへの「確認」を求めるようにしていこう。

 

さて、前回は席のセットを「なるべく動かさない」で済ますため、会場ごとに席の配置パターンを「半固定」とし、それを基本にお客さまとの打ち合わせを行うという考え方をご提案した。
最小限の労力で設営可能な「適正人数」を会場ごとに決めておき、それを超える場合は無理をせず別の会場を使うことを意味する。ただしそのような運用で対応できる範囲であれば問題ないが、忘新年会シーズンの金、土曜日など、宴会需要の多い日はそうもいかない。

また仕切り壁で区画して使った会場を、翌日通しで使うために席を組み替えるといった場面がある。さらには会議会場と宴会場のどんでん返しも、旅館によってはかなり頻繁にある。

 

そこで「適正主義」の延長線上でもう一つ、これは高度な判断になるが、「会場の制約からどんでん返しが必要になる団体を受けない」という選択肢を付け加えておきたい。

つまり、売り上げの機会損失と労務軽減効果とを天秤にかけるのだ。

それだけを見れば損失の方がはるかに大きいと思えるが、宴会需要の多い日であれば、無理をしてその宴会を受けなくとも別の宴会で埋め合わせができる、ということもある。埋まる可能性の見通しをもとに判断する、いわば「イールド・マネジメント的発想」である。
ただしその前に「会場を分けてやる方法もあります…」という「提案と交渉」をすべきであることは言うまでもない。

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

 

※当記事は、2017年12月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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