旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
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業務効率化への取り組み(30)業務を減らす
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
サービス業において、仕事の効率を高める方向は次の三つである。
① 不要な業務を「省く」。
② 必要な業務は「合理的に」行う。
③ 手間をかけるなら、なるべく「効果的に」見せる。
このうち ② について、本連載<業務効率化への取り組み(1)人件費と労働>以降これまで、いくつかの角度から見てきた。また「作業レベル」「動作レベル」で無駄を減らす方法についてもふれてきたが、ここではもう少し大きな視点で「業務」を減らすことを考えていきたい。
(ⅰ)席セットの組み替えを減らす
宴会や食事の開始間際になって、席を組み替えるような場面がしばしばある。
旅館の業務で何が無駄かといって、「組み替え」や「やり直し」ほど無駄なものはない。これを減らすだけで、大きな省力化が見込まれる。
典型的なのは、上座の有り無し、ひどい場合には「川流れ」から「島形式」への変更といったものである。宴会に手慣れた旅館ではさすがにまれだと思うが、逆に「慣れ」が「ルーズ」という悪弊になって確認を怠り、無駄を生んでいるケースも見受けられる。
これを防ぐには「打ち合わせフォーム」の使用を徹底すべきであることを、本連載<業務効率化への取り組み(11)停滞>でも述べた。
近年多いのは、車椅子やアレルギーなど、特別な対応を要するお客さまの席位置の変更である。一部のことなので、開始直前に聞いて動かす労力をいとわないところも多いが、これも大きな無駄である。特に先付などの料理を配膳してからの変更は極力避けたい。
膳から天板を取り外せる場合は、天板ごと入れ替えるのも手だが、事前に確認ができていればそんな必要もない。
簡単なことだ。「席配置図」を用意して、その席に印を付けてもらえばよい。これは大人数の場合に限らない。5人以上であればそうすべきだと考える。
ついでに言えばこの「席配置図」も、その都度作成するような手間を省きたい。会場別に、利用人数を想定したいくつかの配置パターン図を用意しておくのだ。こう言うと膨大な作業を想像されるかもしれないが、パソコンでエクセルのソフトでも使ってやれば、一つのパターンから複製して少しずつ異なるパターンなど、いくらでも作ることができる。
席の組み替えを減らすため、もう一歩進めて「なるべく動かさない」ことにチャレンジしてみよう。会場数にゆとりのあるところなら、会場ごとにこれまでの経験から頻度の高い配置パターンを選び、まずそのかたちを半固定としてしまう。会場割りやお客さまとの打ち合わせは常にそれをベースに行って、極力動かさない。多少の人数増減は、そこに膳やテーブルを一つ二つ足したり引いたりすることで対応する。
これまで旅館では、お客さまの人数や要望に合わせて会場づくりをするのを当然の「業務」としてやってきた。しかし仕事の効率を高め、生産性を向上させるためには、こうした「常識」にも見直しをかけていく必要がある。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2017年12月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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