旅館経営の知恵
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お届けする経営のヒント-
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旅館の電話応対の基礎と応用(4)ファンをつくる電話応対のヒント
接客サービスの品質向上
電話応対力を高めるためのポイントを見ていきましょう。 旅館の電話応対の基礎と応用 最終章となります。
1.気持ちは態度で示す
旅館の電話応対の基礎と応用1でふれたように、多くの場合『声の調子』が感情を表現していることは間違いありません。少なくとも相手の方はそのように理解するでしょう。
この声の調子をコントロールするのに、おそらく最も効果的なことが、口だけで話さず、態度を伴って話すことだと思います。
よく目にすることですが、電話でお詫びをしている人が、傍から見ていると気の毒なくらいに、頭を下げ続けている場面です。そうでなければ心からのお詫びなど伝わらないのだと思いますが、実際頭を下げているからこそ、声の調子が変わっているのです。
電話を取る時の第一声が、「ありがとうございます、○○でございます」の場合、実際に頭を下げて「ありがとうございます・・・」と言っている人はいますか。決まり文句としての「ありがとうございます」と、心からの感謝の気持ちが伝わる時の「ありがとうございます」は、頭が下がっているかどうかの違いによるのかもしれません。
つまり、第一声からしてお客様に印象の違いを感じさせているということを理解し、見えないはずの態度を改めることは大きな意味を持ちます。
2.気持ちは豊かなことばで示す
旅館の電話応対の基礎と応用2では、電話の取り方のステップで、『ていねいに挨拶する』の項目で、「相手の方が名乗ったら、相手の方の名前を呼びかけて挨拶する」と述べました。
予約しているお客様などは、「予約している○○ですが、お尋ねしたいことがあるのですが・・・」と、名前を告げてくださることがあります。
そのお返事として「はい、どのようなことでしょうか」は、悪くはありませんがありきたりの返事ですから、お客様は特に何も感じないでしょう。
一方これを「はい、○○様、どのようなことでしょうか」と、名前を入れるだけで、ずいぶん印象が変わります。お客様には、明らかに自分のことを気にかけて聞いてくれているという印象を持っていただけるでしょう。
館内の対応としては見かけるお名前を呼びかけての挨拶や返事ですが、電話応対となると、あまり例がありません。これを徹底すると、明確な差別化になるはずです。
また、一般的なビジネスの電話では、「お世話になっております、わたくし○○と申します」に対して、「こちらこそお世話になっております」と挨拶を返します。
この場面で、相手の方の名前に反応して「あっ○○様、いつもお世話になっております」と返せば、これも習慣的な挨拶とは違って、特別な気持ちを示してくれていることを感じてもらえるはずです。
「いつもお世話になっております」と返さなければいけないことでもありません。
例えば、先日こちらの質問に対し資料を送っていただいたという場合、そのことを知っている人であれば、「○○様、先日はていねいに資料を送っていただいてありがとうございました」と、具体的な感謝を伝えることができるはずです。
取引先に対してこのようなやりとりができると、私たちはその取引先にとって特別な存在として受け止めてもらえるに違いありません。
ましてや、取引先に対して横柄な馴れ合いの挨拶で済ませることが、いかに損なことかを知らねばなりません。取引先も感情を持った人間なのです。どのようなお付き合いを望んでいるのか、考えてみればわかることです。
3.名指し人が不在の場合は自分が役に立てることを伝える
これは旅館の電話応対の基礎と応用3のテーマでも扱いました。「○○は今外出しておりますが・・・」と、話の展開を相手の方に預けるのは感心できません。
『役に立つこと、手助けになること』が、サービスの本質です。だとすれば、上記の言い方では、とてもサービスの意識があるとは思えません。
自分ができることを提案してみましょう。
相手の方が気を遣って「すみませんが・・・」と前置きをして伝言を依頼したり、かけ直しを依頼したりすることのないようにしましょう。
いつでもご遠慮なくお申し付けいただきたいのは、館内の応対ばかりでなく、電話応対でも同じです。
4.締めくくる前に『おうかがい』
相手の方からの電話だからと言って、ことばにされた質問が疑問や不安の全てではないと理解しましょう。案外、こんな細かなことまで質問するのは申し訳ない、と遠慮されていることがあるかもしれません。
そこで、質問に答えて終わるのではなく「他に何かご心配なことはございませんか」とたずねてみましょう。
何もなくても、親切な対応だと思われるでしょうし、もし何か引っかかっていることがあればたずねやすくなるものです。
お客様がこちらの回答に対して「ありがとうございました、よくわかりました」と言ったとしても、これからは「それでは、お待ちしております」などと締めくくらないようにしましょう。
「他にご心配なことはございませんか」と付け加えて、お客様が「他にはありません」とおっしゃってはじめて締めくくるようにしましょう。
5.締めくくる前に『具体的な感謝』
もうひとつ、締めくくる前に伝えたいことがあります。心からの感謝をことばで示すことです。
『気持ちは豊かなことばで示す』と先に述べましたが、ここでは特に締めくくりの場面で感謝を豊かなことばで表現することを考えてみましょう。
終わりの場面でよく聞くことばは「ありがとうございました、お待ちしております」「ありがとうございました、気をつけてお出かけくださいませ」などです。
これを、予約内容の変更連絡であれば「お早めにご連絡いただき、ありがとうございました」、到着が遅れそうだという途中からの連絡であれば「わざわざご連絡いただき、ありがとうございました」、とことばを添えるだけで、慣用句的な挨拶から、心の感じられる挨拶になります。
業務処理として聞いているのでなく、何がありがたいのか感じながら聞いていれば、ことばが出てくるものです。
6.締めくくりの仕上げに『自分の名前』と『相手の名前』
電話を受ける際や用件を承る際に、自分の名前を名乗ることは、多くの組織で徹底されているビジネスマナーです。
伝言を承った時に自分の名前を伝えることも、習慣になっていると思います。
一方、質問や問い合わせなど用件が済んでしまうと自分の名前を名乗らずに締めくくることもあるようですが、あえて「わたくし○○が承りました」と名乗ることで、責任感を伝えることができますし、お客様も親切にしてもらったその人にお目にかかりたい気持ちにもなるでしょう。予約の問合せなどは、この時成約しなくとも、後からまたお電話くださる時に、名前を覚えていただけていることで、話の内容を承知している人が対応できる可能性が高くなり、お客様の安心感が増します。
さて、もうひとつの名前、相手の方の名前も、締めくくりには重要な役割を果たします。
電話を取った際、相手の方が名乗ったら、それを受けてお名前を呼びかけて挨拶をしてみましょう、と先に述べました。
締めくくりの場面でも、名前を呼びかけて挨拶をしてみましょう。「ありがとうございました、お待ちしております」に名前を入れて、「○○様、ありがとうございました、お待ちしております」にします。
「○○様、お忙しい中ありがとうございました」「○○様、今後ともよろしくお願いいたします」「○○様、またご遠慮なくお申し付けくださいませ」
名前を呼びかけて挨拶をすると、ずいぶん特別な挨拶に感じられます。それこそがお客様がファンになる特別感なのです。
目の前に相手の方がいるかのように話す、目の前に私たちがいるように感じていただく。それが、私たちのめざす電話応対の姿なのだと思います。
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