旅館経営の知恵
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業務効率化への取り組み(23)業務の洗い出し
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
生産性の向上を考えるには、「労働の中身」を見る必要があること、これを「業務」「作業」「動作」という三つのレベルに区分けした上で、それら各レベルに科学的な目を向けていくことである、と初めに述べた。(No.〈34〉) 以降これまで、主にこの区分けで言うところの「動作」レベル、および「作業」レベルのことについて考えてきたが、ここからは「業務」レベルの観点で見ていきたい。これは、どんな仕事を、誰が、いつやるか、という組み合わせを適切に運用していくための視点である。
業務の洗い出し
どこの旅館にも「勤務シフト」というものがある。出勤から退勤までの時間を決めたもので、一般に業務の中核となる時間帯を軸に、「早番」「中番」「遅番」など、部署ごとにいくつかのパターンが設定されている。
しかし、その就労時間を区切って「何時から何時まで何の仕事」というように業務の内容を明確にしているところはまず少ない。それどころか、どんな業務、あるいは作業が行われているのかさえ、当事者以外詳しいことは知らないというのが、実際のところ大半ではないかと思われる。
これを一度、時間軸に沿って全て書き出してみることをお勧めしたい。そこからいろんな「不思議なこと」が見つかる。
(ⅰ)割り当て時間
ラウンジやナイト施設といった館内営業施設担当者の勤務時間が、必要以上に長く設定されている場合がよくある。特に営業開始前や営業終了後の時間に「余分」がないだろうか。洗い場の係の出勤時間が余裕をみて早めに設定されていることにより、序盤がほぼ毎日「手待ち」になっていないだろうか。
(ⅱ)空白時間帯
例えば、朝の忙しい時間と、次に忙しくなる午後(あるいは昼)の時間との間に、取り立ててすることもない「空白の時間帯」が横たわっている可能性がある。
何もしないでいるわけにもいかないので、どうでもいいような「仕事」を現場で無理矢理作って、そこに当てはめているといったことはないか。
(ⅲ)繁忙時の業務
忙しい時間帯は、極力「その時やらなければならない業務」に絞って集中するのが鉄則だ。しかし時に、そうでない業務が平然と行われている場合がある。本当にその時やる必要があることなのかどうか、吟味したい。
(ⅳ)離れ小島的業務
事務所のカギを開ける、炊飯器のスイッチを入れるといったことだけのために、本来活動すべき時間帯とずれた出退勤時間が組まれている人がないか。また各種計器のチェックなど、そこに近い部署の人がやれば済むことを、担当部署の係がわざわざ離れた場所から来て行っている業務がないか。
(ⅴ)類似業務
同じ、あるいは似通った作業にもかかわらず、場所や使い道の違い、時には部門間断絶などのために、異なる部署でそれぞれに行われている業務はないか。
(ⅵ)毎日やる必要性
毎日の業務として組み込まれているが、それは本当に毎日やる必要があるのか。「3日に一度」や「1週間に一度」まとめてやれないだろうか。
書き出された業務はどれも一見もっともであり、また時間はスキマなく埋められていることと思う。問題を見つけるにはこうした「目」をもって見る必要がある。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2017年8月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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