旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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業務効率化への取り組み(12)停滞
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
作業レベルの四つの工程のうち、残る一つの付加価値を生まない工程―「停滞」について、前回に引き続き「情報の停滞」という観点から考える。
停滞(続き)
(ⅱ)当日確認・変更情報
旅館の受け入れには当日の確認・変更報が付き物である。予約時点の情報だけなら、あらかじめ予定表をプリントして関係部署に配っておけば済むが、当日入手される情報はそうもいかない。多くの場合、こうしたものの伝達はまだ前近代的な手法に頼っているのが実情である。
夕食の開始時間は、係がお客さまに聞いてそれをパントリーのボードに書き込む、そしてフロントや調理場に館内電話や伝票で伝えるといったやり方が行われている。
またグループ客では、人数変更や、アレルギー、苦手な料理などの当日対応も頻繁に求められるが、これらの伝達がそれなりの手間を生み出している。係がその時、急ぎの対応で追われたりすると情報が停滞し、後工程の段取りを狂わせたり、「やり直し」を発生させることになる。場合によっては「伝達漏れ」により不手際を生ずるリスクもはらんでいる。このような問題は毎日のことであり、なんとかしたい。
改善には、まず何よりも「伝達ルール」をきちんと決めて徹底することが必要だが、より抜本的な合理化を図るには、情報システムの装備をぜひ検討したい。食事開始時間や変更などの情報をフロントや担当係が入力すれば、各セクションで瞬時に表示されるような類のものである。
この分野のシステムは業界でまだあまり一般的ではないが、いくつか実現されているものがある。ただしこれらは予約・会計など基幹システム(Property Management System:PMS)と連動している必要があるので、そう簡単なことではない。検討するとすれば、PMSの更新あるいは導入のタイミングということになる。その際には、この点も視野に入れることをお勧めしたい。
(ⅲ)現場業務の進行情報
後工程をひかえた業務進行―チェックイン・アウト、客室の清掃、宴会場の片付け・セット、食事のスタート、食器が下げられるタイミングなどに関する情報である。これらの進行状況が正確に把握できれば、次の工程に人員投入するタイミングを適切にし、手待ちなどのタイムロスを減らせる。
とりかかる時間は、もともと進行に合わせて想定されており、タイムロスは、その予定よりも遅れたり早まったりした場合に起こる。時差が発生したら、いち早くその部署へ連絡するのはもちろん大切だが、予定に合わせて業務シフトが組まれているので、すぐに対応を変えることは難しい。
対策としては、中間で「見通し情報」を流すことである。
「○○様は途中の観光をとりやめにしてご到着が1時間ほど早まる見込み」、「宴会の開始が30分遅れたから、食器が下がってくるのは〇時ごろになる」など。このような情報を伝えておくことで、事前に準備態勢がとれたり、空いた時間を他の業務に割り当てたりすることも可能になる。また前工程の作業段取りをあらかじめ伝えておくことも有効だ。例えば部屋の掃除なら、どの部屋(階)からかかるのか、といったことを伝えておくだけで、次の業務にあたる部隊が右往左往せずに済む。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2017年3月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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