旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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業務効率化への取り組み(8)運搬改善
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
前回に続き、運搬改善の着眼点について取り上げる。
運搬改善の着眼点(3)
(ⅵ)積み換えをなくすこれには施設構造が大きく関わる。
出来上がった料理などを多段カートのまま冷蔵庫に保管できるよう、プレハブ冷蔵庫を床フラットのカートイン式にすべきであることは言うまでもない。
一般に、旅館で「積み換え」が最も多く発生するのは食事会場、とりわけ畳の宴会場まわりだ。床レベルがバックヤードの床面より高くなっていることが一番の要因である。床のレベル差をなくせばよいのだが、そのままの前提で積み換えをなくすには、次のようなことを検討してみたい。
ひとつは、緩やかなスロープを設けること。ただし車輪がバックの汚れを引きずる可能性があるので、スロープ通過の際に汚れをとるような対策(マットを敷いて毎日交換するなど)を講ずる。もうひとつは、スペースが許すなら、大型旅館の物品搬入口や物流のトラックターミナルなどで見られる荷受け場の考え方を応用する。
便宜上、バックヤードの床レベルを「海」、会場のレベルを「陸」と見立てる。まず宴会場のパントリーないし運び入れ口に、「陸」レベルの板敷きスペースを設けて、台車がここに「着岸」できるようにする。広めのパントリーなら、「桟橋」のような突き出し床を設ければ、同時に複数台の着岸も可能になる。
一方、台車は「親子台車(台車の上に台車が載っている状態のもの)」を考える。「親台車」の積載面の高さは「陸」の高さに合わせて作り、「着岸」したら「子台車」ごと会場に運び入れることができるようにする。ただし一般にそういうものはないので、残念ながら特注するしかないが、これがうまくいけば、「子台車」は床の汚れを引きずることなく会場内に運び入れることができ、終了後の片付けにも威力を発揮するはずである。
(ⅶ)運搬経路を改善する
右へ左へとかじを切らなくてはならないような動線は、運搬効率を著しく低下させるばかりでなく、盛付けのくずれや汁物のこぼれ、衝突による破損といったロスの原因にもなる。経路はできるだけ直線的に移動できるようにすることが鉄則だ。
運搬動線上に余計なものを置かないこと、どうしても置かざるを得ない場合は、せめてどちらか片側に並べ、「出っ張り」がないようにその前面をそろえることを徹底しよう。
エレベーター前や通路の分岐点などの方向転換を必要とする場所は、スムーズに曲がれるよう、なるべく空間にゆとりを持たせたい。
また建築上、床にエキスパンション・ジョイントや「への字」金具といったものがしばしばあるが、こうした「小さな段差」が現場では思いのほか障害となっている場合も多い。上にパンチカーペットを敷くなどしてなだらかにすることをお勧めする。
(ⅷ)カラ運搬を減らす
どこかへ物を運んだ帰りは、カラで来ることがほとんどだと思うが、その際ついでに何か運んで来ることができないかを検討してみたい。仮にこれが100%実現できれば運搬効率は理論上2倍になる。現実にはあり得ない話だが、業務全体を見渡して運搬タイミングの組み合わせを考えることで、ある程度は可能であろう。
また小さなことで言えば、料理を提供する際に空いた器を下げるというのも「カラ運搬」を減らす大事な要素である。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2016年12月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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