旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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業務効率化への取り組み(5)運搬工程
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
旅館のさまざまな作業を「工程」と見立て、うち「運搬」の工程がかなり多いこと、また運搬そのものは価値を生まないので、 なるべく少なくしたいことを前回お伝えした。試みに、旅館の中で最も大きなボリュームを占める料理提供にからむ作業を少し細かく見てみる。
運搬工程
お客さまのところへ料理が提供されるまでの工程は、中規模程度の旅館の場合で、ざっと以下のようなものであろう。
(ⅰ)食材の搬入から調理まで。
まず食材の準備…
・食材の納品→検品→運搬→収納(冷蔵庫・食品庫など)→積み込み→運搬→収納(調理場冷蔵庫)→取り出し→運搬→(調理場)→調理
一方で食器の準備は…
・(食器庫)積み込み→運搬→荷下ろし(盛付場)→皿並べ(盛付台)
(ⅱ)調理から提供まで。 この工程は大きく三つに分かれる。
作ってすぐに出すものなら…
・(調理)→盛り付け→積み込み→運搬→(パントリー)→積み換え→運搬→提供
いったん作って製品保管するものなら…
・(調理)→盛り付け→積み込み→運搬→収納(パントリー温・冷蔵庫)→取り出し→積み込み→運搬→提供
半製品の状態で保管するものなら…
・(調理)→積み込み→運搬→収納(冷蔵庫)→取り出し→積み込み→荷下ろし(盛付場)→盛付→積み込み→運搬→(パントリー)→積み換え→運搬→提供
また下膳から食器収納までの工程は以下のようになる。
・下げ→積み込み→運搬→(パントリー)→積み込みまたは積み換え→運搬(洗浄コーナー)→はたき→浸透槽漬け込み→下洗い→仕分け→洗浄機流し→取り→積み込み→運搬→収納(食器庫)
<補足>
・食器を食器庫に収納する場合を想定している。
・半製品の保管場所をパントリーと想定しているが、パントリーにそれだけのスペースや機器がない場合は厨房付近の温・冷蔵庫にいったん保管することになり、運搬の回数は1回増える。
・冷蔵庫が大型のカートイン式であれば、収納、積み込みの工程は減る。
・料理の盛付は、器に盛り付ける料理の部品点数が多ければそれだけ盛付作業の回数は多くなり、場合によっては運搬作業も増える。
・パントリーでの積み換えは、食事開始前の配膳か開始後の提供か、食事会場の床がバック通路と段差のない床かそうでないか、畳台車やホール用ワゴンを利用するかしないかなどの条件により、する場合としない場合がある。
・下げた器の「はたき」(残菜落とし)は各パントリーで行われる場合と洗浄コーナーで行われる場合とがある。
分かりきった工程をわざわざ書き出したのは、この中に「運搬」と、それに付随する「積み込み・積み換え・取り出し」といった工程がいかに多いかをあらためて認識いただくためである。ごく一握りの旅館を除いてこの作業はすべて人の手によって行われている。
立ち食い寿司屋のように、お客さまの目の前で調理して、出来上がったその場で提供するなら運搬などする必要もないが、旅館は作る場所と提供場所、作る時間帯と提供する時間帯が異なるので、ゼロにすることはむろんできない。従って、せめてできるだけこれを合理的に行う方法を考えることである。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2016年11月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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