株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

業務効率化への取り組み(2)動作

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

初めに、前回申し上げたことの要点をかいつまんで振り返る。人件費を適正に運用するためには「労働の中身」をよく見て、それを有効な価値に置き換えていくことが求められる。 「労働の中身」となるのは「業務」であり、これは「作業」、さらに「動作」に分解できる。生産性の向上を図るには、これら「業務」「作業」「動作」の各レベルに科学的な目を向けていくことである…ざっと以上のようなことをお伝えした。わざわざこのようにレベルを分けたのは、その方が改善のターゲット分野をはっきり切り分けて捉えることができるからである。

動作

まず一番小さな単位となる「動作」だが、結論から言えば旅館においてこの領域の優先度はあまり高くない。なぜなら、動作の問題よりも作業や業務のあり方の方が、はるかに大きな比重を占めるからである。

 

動作に関しては、今からおよそ百年ほど前に「動作研究」というものが行われている。「サーブリック分析」と呼ばれるものだ。これによれば、「動作」は「つかむ」「運ぶ」「放す」など「作業に必要な動作(第1類)」をはじめとする18の「動素」(動き、あるいは動かない状態)に分類される。18の「動素」の中には「探す」「選ぶ」などの「作業を遅らせる動作(第2類)」や、「つかみ続ける」「休む」といった「作業に不必要な動作(第3類)」が含まれる。「サーブリック分析」とは、おおざっぱに言えば、作業の流れを18の「動素記号」によって表わした上で、「第2類」や「第3類」に属する要素をなるべく排除して作業の密度を高めようとする手法である。

ただしこれらは、前述のように百年も前に、しかも「レンガ積み」という単純作業の研究から生まれた分析である。製造業などにおける流れ作業のような仕事には効果があるだろうが、私たち旅館の仕事には「おじぎをする」「料理を置く」「ドアを開ける」…など数限りない「動作」の種類があり、そのまま当てはめるのは難しいと思われる。強いて言えば、料理の盛付や食器洗浄といった作業ではそれなりに有効であろう。

「動作研究」からその後展開され、長い間で書き加えられてきたものに「動作経済の原則」というものがある。これは四つの「基本原則」に沿って、「身体部位の使用についての原則」「作業場所の配置についての原則」「設備・工具の設計についての原則」という三つの分野で具体的な指針が示されている。ちなみに「四つの基本原則」とは次のようなものである。

 

(ⅰ)常に両手を同時に使う。
(ⅱ)動作の数を減らす。
(ⅲ)個々の動作の距離を最短にする。
(ⅳ)動作を楽にする。

 

各分野の原則について詳しいことはここでは省くが、これらの中には旅館においても大いに生かすべきものがある。ただ、これらはどちらかと言えばここで述べるところの「作業」レベルの問題と考える。従ってその中で適宜ふれていくことにしたい。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

 

 

※当記事は、2016年9月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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