旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
離職を防ぐ!求められる現場の対応力 第六回 ~離職を考える人の思考を知る~
前回から、離職を考える人へのアプローチを考えてきました。今回は、離職を考える人に対する他者のアプローチから、離職を考える人の思考を知り、対策を考える手段を考えていきましょう。
転職サイトから手の内を知る
転職のコマーシャルでは、転職に行動を起こさないのはもったいないかのようなドラマが演じられています。誰でも一度や二度は転職サイトを覗いてみたいと思うでしょう。そんな転職サイトには、あの手この手の退職に関する「おすすめ記事」が掲載されています。転職の進め方や申し出方まで、懇切丁寧なアドバイスが並んでいます。この指南を参考にすれば、相手の手の内を知ることができるというわけです。
*参考ウェブサイト:
リクルートエージェント、マイナビ転職、パソナキャリア、DODA、退職代行ナビ
まず、よく言われる退職の理由を確認しておきましょう。そもそも、転職サイトの中には、「円満退社が実現する退職理由」を、これらの3つのいずれかにするのがよいと指南しているものもあります。
【表向きの理由 トップ 3】
1.自分の力を試したい、他の仕事をしてみたい
2.仕事とプライベートのバランスを取りたい
3.健康上の理由や生活環境の変化のために勤務を続けられない
さらに、指南の具体的な内容は次のようなものです。
例えば、「自分の力を試したい、他の仕事をしてみたい」という表向きの退職の理由については、
・・・仕事内容や勤務条件などへの不満、会社や上司の評価に対する不満が本音であっても、ネガティブな退職理由は、『改善する』『対処を進める』などと引き止めの材料にされる可能性があります。ですから、「自分自身を見直し、よく考えた結果、現在の仕事とは違う業種・職種に挑戦してみたいという気持ちが抑えきれず、退職を決意するに至りました。」と伝えましょう。そうすることで、退職のために余分な時間をかけず、精神的なストレスを受けずに済みます。
と解説されています。
確かに、不満が理由であれば、『改善する』『希望の部署に異動させる』など、引き止められる可能性を、こちらは探さねばなりません。本人にとっては、そういうややこしいやり取りは不要で、とにかく辞めたいのだから、表向きの理由は何でもよく、辞めやすい理由こそが重要なのでしょう。
「病気による退職」は、「何とか続けたいと思い頑張って参りましたが、持病が悪化し、しばらくは療養するために、一度退職という形をとらせていただくことにしました。」と答えるのがよいと紹介されています。それ以上深く尋ねることにも遠慮がいる話です。
「家庭の事情」も然りです。「両親が働いているので、私が祖母の面倒を見ることに家族で話し合って決めました」と言われては、それ以上のことを話す隙はありません。
これらが、本当の理由である人もいるでしょう。しかし、ネット上でこのような情報を得て、退職を願い出てくる人も少なくはない、ということを認識しなくてはなりません。
さらに、CHAT GPT を使えば、こんな会話が準備できてしまうのです。
入力:
退職願を提出する時に、スムーズに退職を進めるためには、具体的にどのように言えばよいのでしょうか?
答え:
退職願を提出する際には、丁寧かつ感謝の気持ちを伝えつつ、スムーズにコミュニケーションを図ることが重要です。以下は具体的な言葉の例です。
1. 感謝の表明
“この度は、お世話になりました。心から感謝申し上げます。”
2.退職理由の説明
“私にとって新しい挑戦を求める時が来たと感じており、この度退職を決断しました。”
3.業績の振り返り
“一緒に働く中で多くのことを学び、成長することができました。”
4.感謝と尊敬の表明
“上司や同僚のサポートには本当に感謝しています。尊敬しています。”
5.円滑な引継ぎへの意欲
“引継ぎには十分協力し、円滑に進めるように努めます。”
6.良好な関係維持の意向
“今後も良い関係を続けていきたいと思っています。”
7.最終的な感謝の言葉
“これまでの経験に心から感謝しています。どうもありがとうございました。”
これらの要素を含めることで、相手に感謝の気持ちを伝えつつ、スムーズな退職プロセスを進めることができます。コミュニケーションの透明性と感謝の表現は、良好なビジネス関係を維持する上で重要です。
いかがでしょうか。嘆いたり驚いたりしているだけでは何も始まりません。こちらとしては、このような状況を前提とした対策が必要だということです。
転職サイトでは、同時に、本当の退職理由や原因についても調べています。
【退職の本当の理由 トップ 3】
1.コミュニケーションの不足や誤解からくるモチベーションの低下
2.組織内での不満やストレス
3.職場のカルチャーと嗜好のギャップ、価値観の不一致
本音は、会社や上司との認識の違い、コミュニケーション不足、理解されないことへの不満、が原因ということなのです。課題とすべきキーワードは、モチベーション・ストレス・価値観です。
宿泊業界においても、報酬面や労務環境はこの数年で確実に改善が進み、上を見ればキリがないものの、それを理由に辞めるケースは減ってきているようです。ただし、人員不足のために負荷がかかることが原因になることはかなりあり、この場合も、仕事の与え方や声のかけ方などには気を配るべきなのですから、やはり上記の本音とは切り離すことができません。
転職サイトのアドバイスによれば、「本音を語ってしまうと引き止められる」としているのですから、逆に、本音を語ってもらえば、こちらとしては「打つ手が見えてくる」と考えることもできそうです。
次回は、実際に離職を申し出てきた方とのお話の仕方について考えていきたいと思います。
テーマ
最近の投稿
最新人気の記事