旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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インバウンドへの対応(2)
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
旅館をとりまく市場の大きな特徴として、前回に引き続きインバウンドについて取り上げていく。
3.インバウンド集客の方法
インバウンド集客を図る場合、大きく分けてツアー団体をとっていく方向と個人旅行(FIT)をとっていく方向とがある。
ツアー団体をとっていくには、ランドオペレーターと呼ばれる、インバウンドツアーを扱う国内旅行会社との関係づくりをしていくことがまず考えられる。ただしご承知のように、現状はどちらかと言うとまだまだ東京、大阪を結ぶゴールデンルートが大半であり、このルート上か、もしくはドラゴンルート(昇龍道)などの代表的な周遊観光ルート上にない地域は、彼ら旅行会社もなかなか積極的な関心を向けてはくれないのが現実である。
もうひとつは、直接海外の旅行会社との関係づくりを行う方法が考えられる。日本国内や、それぞれの国で催される見本市、商談会等にブース出展する方法、コネを頼って海外に赴き、提携プロモーションを行う方法などがある。
ただしこの場合も、地方観光地の単体旅館でゼロからツアー獲得していくのは難しい。ここは地域連合で攻めること、そしてもし可能なら、離れた地域にあるメジャーな都市や観光地どうしを結び付けて、その中間に自分の地域を位置付け、周遊ルートを組み立てることである。
近年、官庁や地方自治体などが主催する「ファムトリップ」(海外旅行会社や有力ブロガーなどを招いて行われる国内視察体験旅行)というものがある。それほど多くはないが、こういうものに体験宿泊先として関わっていく手もある。
いずれにしても、海外からのツアー団体誘致は、日本を代表するような温泉地や、スキーなど特殊な目的性を持った地域か、あるいはゴールデンルートなどの広域スケールで組み上げられた周遊ルートにはまっていなければ、「今のところは」容易ではない。
一方、地道ではあるがどんな地域でも開拓できる可能性のあるのがFITである。
手っ取り早い方法としては、Expedia、Booking.com、Agodaといった世界的な予約サイト(OTA:オンライン・トラベルエージェント)への登録が有効であろう。
自社ホームページ(HP)からの予約を図るなら、HPと併せて予約エンジンも言語対応させる必要がある。理想的には、ねらいとする国それぞれの言語に対応したものを備えることだが、いきなり各国語への対応が困難であれば、とりあえず英語だけでもよいだろう。さらにそのHPを、対象国のネット検索エンジンで拾い上げてもらうための対策を講じる必要がある。これらの具体的な作業や手続きは、専門家(そういうものの扱いに実績のある会社)に相談することをお勧めする。
問い合わせ等のメール対応が少々やっかいだが、今はネットを介した各種の翻訳サービスもあるので、そういうものを利用すればそれほど恐れることもない。
OTAにせよ自社HPにせよ、留意しておきたいのは、海外では一般に日本旅館の2食付き宿泊形態は認知されていない、また知っていたとしても2食付き宿泊という習慣がほとんどないことである。「ウチはとにかく2食付きでいく」という固い方針なら別だが、積極的な獲得を期すのであれば、まずは門戸を開いて「朝食付き」ないし「素泊り」も掲げていくことをお勧めする。
また日本ではシーズン、ターゲット層、利用ニーズなどに応じたさまざまなプラン表現が華々しいが、外国向けにそうしたものはむしろ邪魔であり、シンプルでわかりやすい宿泊料金表示をした方が良い。
(株式会社リョケン 代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2015年12月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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