株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
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旅館の「DX」を考える 4.ITシステム導入の進め方(後編)

旅館・ホテルのデジタル活用

ITシステムの導入はDX推進の一部であり、DX推進の前提には「将来ビジョン」があります。つまり、ITシステム導入の際には、将来ビジョンを踏まえた「経営方針」として取り組んでいることなのだという認識を社内で共有する必要があります。

(3)進め方の具体例

(3)-1 トップがリーダーシップをとって推進する
経営陣自ら、将来ビジョンを語り、経営方針として具体的な取り組みを進めていく場合、決裁を早く行えるため、スピード感をもって導入を進められるメリットがあります。この場合、「現場との温度差」ができないよう、現場とのコミュニケーションを密にすることがポイントとなります。ITシステムを導入しても、現場のスタッフが活用できなければ意味を成しません。特に、ITリテラシーが高くないスタッフには、過度な不安を与えないよう、事前に試してもらうなどの配慮が必要です。トップダウンで一方的に与えられたものという印象にならないように進めることが重要です。

 

(3)-2 現場主体のプロジェクト形式で進める
各部署からの代表者からなるプロジェクト形式で進める方法があります。メンバー選びのポイントの一つめは、IT分野が得意な人だけでなく苦手意識がある程度ある人も入れることです。これは、既に述べた「誰でも使えるシステム」という視点を持たせるためです。

二つめは、部門内での信頼が厚いメンバーを入れるということです。現場のことをよくわかっている人が部署を代表して意見を出し、導入を進めているとなれば、現場の理解も得やすくなります。

三つめは、レガシーシステム(既存システム)の導入担当者は主たるメンバーにしないことです。過去の時点で最も良い選択をしてシステムを導入したという思いがあると、過去の成功体験にとらわれ、新たな発想が生まれにくいケースがあるためです。ただし、過去の経験からのアドバイスが必要になる場面も出てくることから、アドバイザーとして関わってもらうことが望ましいと考えられます。

四つめは、デジタルネイティブ(物心ついた頃からインターネットが身近にあった世代)と呼ばれる世代の視点を取り入れることです。「メモを取る」ために用意するものが「紙とペン」の世代と「スマホ」の世代では、価値観に大きな隔たりがあります。将来を見据えたITシステム導入には、この世代の視点は重要と言えるでしょう。
プロジェクト形式の場合、実際の運用をイメージしながらシステムの選定ができるというメリットがある一方で、経営的な視点での考え方ができずに将来ビジョンからずれていくことも想定されます。経営陣の意向を代弁できる幹部がオブザーバーとして入るなど、現場主体の形をとりながら、時に軌道修正もできる形で進めることがポイントです。

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