旅館経営の知恵
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旅行市場を握るシニア層(2)
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
シニア層は3296万人という人口に加え、経済的ゆとりと、年間を通じて旅行のできる時間的ゆとりを持つ。定年を迎えたサラリーマンの場合、これからが「第二の人生のスタート」という言葉がよく聞かれる。これまで時間に追われてやりたいことを我慢していたとか、気のおけない人とゆっくり過ごすこともできなかったという「思い」から、それを挽回するかのように旅行に出かける人が数多くいる。
農業や自営業などに従事している人は、60代~70代ではまだ現役として仕事をしている人も多い。しかしそれでも、子どもはとうに独立していることもあり、元サラリーマンと同様、時間をつくって旅行を楽しんでいる人が多くいる。
前回は、シニア層が大きな市場となりつつあること、そしてこれを一括りに捉えず、それぞれの立場に寄り添って「思い」の実現をお手伝いする姿勢が大事である、ということについてお伝えした。
ではこのシニア層には、旅行において具体的にどんなニーズやウォンツがあるのだろうか。「思い」の観点から三つピックアップしてみる。
2.シニア層に向けた旅行への対応
1)“皆で楽しみたい”という「思い」
まず、身体が元気に動くうちに“皆で楽しみたい”という「思い」をかなり強く持っている。同じ時代を一緒に生きてきた友人と楽しむ「同窓会」「クラス会」などがその代表例である。
ある旅館の「同窓会プラン」では、大きな宴会場で参加者全員が一緒に床を敷いて寝るという内容で企画を打ち出した。オプションで「枕投げ」を用意するなど、まさに修学旅行のノリである。いい大人が枕投げなどはしないが、「同窓会」だからできる商品内容だ。
同窓会やクラス会の他にも、学生時代のサークル仲間、同じ職場で働いていた仲間、地域や各種団体の役員として一緒に頑張った仲間などにも同様の「思い」がある。過去の一時期を共有した者どうしならではの一体感の追体験ができる、共通の話題がある、互いに若かった昔に返って元気が出る…その懐かしさがたまらない。このような「昔懐かしコミュニティ」の結びつきは非常に強く、しかも持続性がある。
シニア層はまた、生活に密着したところで、趣味や健康などのサークル活動や習い事をしている人が多い。歩こう会、山歩き、グラウンドゴルフ、カラオケ、民謡、ダンス、手芸、料理、写真、絵画など、実に様々な分野のサークルがあり、多くの人が何らかの、人によってはいくつものサークルに属している。
そしてこの仲間どうしで、旅行や集まりが頻繁に行われている。共通の話題のある仲間と、まさに“皆で楽しみたい”という「思い」である。
“皆で楽しみたい”という「思い」は、何もシニア層に限ったことではない。しかし宿泊を伴う平日の旅行でも比較的スケジュールが合わせやすいのはシニア層だけであり、旅館にとっては重視すべきターゲットである。
(株式会社リョケン 代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2015年8月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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