株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

削ぎ落とすべきコストを考える(2)

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

前回は「提供する商品の見直し」という視点から、商品にからむ戦略的なコスト削減を提言した。今回は管理・業務レベルに視点を落として生産性向上対策の方向を考えていきたい。

2.労務効率の見直し

ⅰ)効率の「見える化」

さまざまな業務の効率を数値化してみることである。接客やバック業務、営業活動などの効率を可能な限り数値に置き換え、それによって実態評価、目標設定、向上達成度評価などを行う。
どんな効率指標を用いるかは各旅館それぞれで良いと思うが、現場業務に関して言えば、簡単かつ有効な物差しは「1人1時間あたり」、あるいは「担当係1人当たり」というものである。

ⅱ)集中・集約化

分散して効率悪く行われている業務はないか、それらをどこか1カ所に集中して処理することができないかを検討してみよう。また「移動」・「運搬」など何度も反復している作業を一度で済ますことはできないか、といった検討も効果的である。

ⅲ)機械化・電子化・Web化

機械やパソコンでやればほんの一瞬で済むのに、昔ながらの人海戦術で行っているような業務はないだろうか。機械やコンピュータシステムを導入するにはそれなりのお金もかかるが、長い目で見ればその方がはるかに安上がり、ということが多くある。
またこの時代、社内情報の伝達や共有、社外との情報交流や情報収集にはWebの積極的な活用を図ることは必要である。社内でいまだに一握りの人しか電子メールを扱えない、というような状態では世間からも取り残されてしまう。

ⅲ)現場を見る

労働効率向上をもたらす変革のネタは常に現場にある。ところが現場管理者などは毎日の業務に埋没しているので、「その流れ、そのやり方で行うことがすなわち仕事」という観念に縛られて、それ以外のやり方など思いもよらないという場合が多い。仮にもっと合理的、効率的なやり方があると感じていても、そこに少しでもお金がかかりそうだと思うと言わずに黙っている、ということもある。
だから経営者が、経営者としての「目」と「裁量」をもって現場の業務を見ることには大きな意味がある。

3.間接部門の見直し

商売と直接に関係のない仕事を担うのが間接部門である。組織が大きくなるに従って間接部門が必要性を増すのは自然な流れである。しかしこれは放っておくと必要以上に肥大化する傾向がある。現業部門で本来やるべき仕事をわざわざ間接部門に委ねる、間接部門の中でも、たいして必要のない書類を増やしたりする、といったことが起こる。またそれぞれに、「私たちの仕事はここまで、それはあなたの仕事」といった垣根意識を生む温床にもなる。現場がどんなに忙しくても関係ない、手伝おうとしないというような風潮も生じかねないので注意が必要である。
一方で、だからといってあまりにも間接部門を切り詰めた体制では、各部署で重複作業が生まれる、部門間の連携や調整がうまくいかない、全社的に推進すべき課題を担う部門がないといった弊害も起こる。
従って間接部門については、担う役割や必要性の度合いを考え、部署の区割りや配置を適正に保つための「見直し」を定期的に行うことが肝要である。

(株式会社リョケン 代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2015年6月に観光経済新聞に掲載されたものです。

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