旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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パフォーマンス・アップの着眼点(1)
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
「攻める発想」で経営を行なっていくためには、高い収益性の実現が求められる。すなわち「コスト・パフォーマンス」を高めること――より小さな労力、コストで、より大きな価値をつくり出すことである。 まず「パフォーマンスを高める」方向性だが、一言でいえば「いかに効果のあることをやるか」ということにつきる。総花的に(平均的に)いろんなことをやっていたのでは覚束ない。そこで「何かを選び、そこに経営資源を集中すること」――よく言われる「選択と集中」を図っていくことが、パフォーマンス・アップへの突破口となる。 では何を選択し、どこに集中するか?・・・いくつかの手がかりを示したい。
1.どんな価値を提供しようとするか
「宿としてのコンセプト」をはっきりさせることである。自社がお客様に提供していく価値の「真ん中におくもの」はいったい何なのか? を突き詰めて考えてみる。
自然環境を満喫させる、老舗ならではの格調高いもてなし、コミュニティ機能、健康に資する、人どうしのふれあい、至福の食事、夢のような時間、気軽な脱日常、とにかく楽しい・・・
これに、対象客層や利用ニーズをかけ合わせると、イメージは一段と具体的になる。家族のための、女性のための、男性のための、カップルのための、接待利用のための、集いのための、ハレの日のための・・・
これを自館の「中心的な価値」と位置付ける。これこそが、労力やコストを集中的にかけるべき部分ということになる。またこれをはっきり主張していくことで、商品には別の価値が生まれる。施設づくりで言えば、単におしゃれなムードだけではいずれ限界が来る。それだけのものなら日本全国いたるところにあるからである。しかしそこに宿のコンセプト(主張)が加わることで、強い「意味」が乗ってくる。
施設でも料理でもサービスでも、「ウチはこういう宿だからこうしました」という主張を乗せることが非常に大切なのである。
2.ユニークな強みを持つ
よそにない強み、よそに負けない「オンリーワン」を持つことを考える。総合的なナンバーワンはどこでもできることではない。また総合的にナンバーワンであることは、昔に比べて意味を持たなくなってきている。お客様が求めているのは「自分にとってどんな価値があるか」なのだから。
【オンリーワンの例】
お客様の名前と顔を憶えている。
よそでは食べられない特徴的な料理がある。
どこよりも上質なお肉を仕入れている。
特定の客層「○○向け」に特化した価値を提供している。
周辺の観光のことなら、どこよりも詳しい情報を提供できる。
いくつかの言語に対応できる社員をそろえている。
○○の品ぞろえではどこにも負けない。
ただ忘れてならない、そして忘れがちなのは、こうしたオンリーワンを「上手にしっかり」アピールすること、そして「それを集客にどう結び付けるか」を考えることである。それがなければ、戦略性を欠いた単なる趣味になりかねない。趣味だけで商売が成り立つほど甘い時代ではない。
(株式会社リョケン 代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2015年5月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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