旅館経営の知恵
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お届けする経営のヒント-
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旅館の「DX」を考える 3. ITシステム導入の考え方(後編)
旅館・ホテルのデジタル活用
アナログからデジタルへと言うと、「ペーパーレス」や「情報のデータ化」から取り組むケースは多いでしょう。しかし、ここでも必ず念頭に置きたいことは、「データ化の目的」です。紙の書類の保管場所をなくすために書類をスキャニングして保存することもデジタル活用の取り組みの第一歩にはなります。しかし、最終的に目指したいのは、「紙で行っていたことをデータ化する」という発想ではなく、「活用したい情報や、保存が必要な情報を初めからデータで保存する」という発想です。
(5)何でもデータ化しない
旅館業界に限らず、これまでのデジタル活用は、紙の文書を「作る手段」や「保管の手段」としての利用が主となっていました。そして、あくまで「紙が原本」という前提で公的手続きやビジネス上の契約が行われてきました。
そのため、コロナ禍で「紙に捺印するためだけに出社する」ことが大きな問題となったのです。日本社会全体が、「データが原本」という思考への転換を迫られています。真の意味でのペーパーレスは、「紙」という媒体を経由しない情報のやり取りや保管を意味するのです。
では、何が「原本」たる「データ」として必要なのでしょうか。「データの保存は場所を取らないし検索すればよいのだから、できるだけデータ化しておいたらよいのではないか」と考える方も多いと思います。
しかし、データ化にもデメリットがあります。個人情報を必要以上にデータ化すれば流出のリスクが高まります。また、あらゆる情報のデータ化を無造作に進めると、アナログの時よりも非効率な状態に陥ります。
インターネットで何かを調べる時のことを想像するとわかる通り、大量の情報が溢れすぎていると、重要な情報や自分の必要とする情報を探し出すことにかえって時間がかかることがあります。
ある施設の事例です。ここでは、リピーターのお客様の情報を再訪時に活かすため、予約や接客の際のお客様とのやり取りや気が付いた点を、とにかく全てデータに残すことを始めたのです。
口頭やメモ書きでの引継ぎが不要になり、「きっと新人でも事情がわかるようになったはず」と思っていたところ、現実は奇妙なことになりました。お客様を迎える前に新人スタッフがお客様情報を確認するための時間がかなり長くかかるようになってしまったのです。
なぜかと尋ねると、こんな答えが返ってきました。「このお客様情報にはたくさんのことが書かれています。そのため、以前、重要な情報を見落としたことがありました。だから、そういう大事なことを見落とさないよう注意深く読んでいるので、時間がかかるんです。」「重要な情報」を見つけることが、データの山からの宝探しのようになってしまったのです。
このような状況を避けるためには、共有するデータの使い方(いつ、誰が、どのように見るのか)を想定し、保存すべき情報の選別や入力方法のルール化をすることが大切です。
データを入力するのにもそれだけ手間がかかります。「必要な情報は何か?」を見極めた上でデータ化することが望まれます。
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