旅館経営の知恵
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お届けする経営のヒント-
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旅館の「DX」を考える 3. ITシステム導入の考え方(中編)
旅館・ホテルのデジタル活用
経済産業省は、2018年に発表したDXレポートにおいて、「2025年の崖」問題を取り上げています。企業がDXに積極的に取り組まなければ、2025年には「21年以上稼働しているレガシーシステム」がシステム全体の6割を占めることになり、日本企業の多くが国際競争に乗り遅れ、事業機会を逸し、2025年~30年の間に最大12兆円の経済損失が生じると推定しています。そのため、DX推進の必要性を強く訴えているのです。
(4)レガシーシステムとの訣別
「レガシーシステム」とは、時代遅れの古い仕組みであり、情報システムの分野では、過去の技術や仕組みで構築されているシステムのことを指します。
経済産業省は、2018年に発表したDXレポートにおいて、「2025年の崖」問題を取り上げています。企業がDXに積極的に取り組まなければ、2025年には「21年以上稼働しているレガシーシステム」がシステム全体の6割を占めることになり、日本企業の多くが国際競争に乗り遅れ、事業機会を逸し、2025年~30年の間に最大12兆円の経済損失が生じると推定しています。そのため、DX推進の必要性を強く訴えているのです。
旅館業界においては、アナログも含めた「古い仕組み」を変えていくという視点が必要になります。なぜならば、DXは新たな時代に合わせたビジネスの変革のために行うものであり、旧来の仕組みをデジタル化することが目的ではないからです。
新たにデジタル化に取り組むにあたって、これまでのサービスや業務の進め方が果たして新たな時代に合っているのか、これからのお客様のニーズに合うものなのか、企業理念と将来ビジョンに沿って考え直す必要があります。そしてその上で、情報システム分野の「レガシーシステム」の刷新に取り組む必要があります。
では、早くにシステム化に取り組んできた施設はDXにどう向き合うべきでしょうか。実は、長年アナログなやり方を続けてきた施設以上にDXが進みにくいのが、早くからシステムを活用してきた施設なのです。
長年、紙の予約台帳で管理してきた施設が一足飛びに最先端の技術を採用する場合は、意外と導入がスピーディーかつスムーズにいきます。ところが、システムを既に利用していて、日常業務に不都合がない場合は、変化をさせることに対して消極的になってしまうのです。日常業務に支障がないならよいのではないか-その考えで古いシステムを刷新しないという企業が多いことこそが、「2025年の崖」の要因なのです。
古いプログラムで組まれたシステムは、新たな技術との連携ができないばかりか、プログラムを理解する人材がしだいに減り、不具合対応や改修が困難な状況になっていきます。メンテナンスや維持にかかるコストが新たなシステムの導入以上にかかるケースも出てくると考えられます。
しかし、高額な初期費用を投入し、カスタマイズを重ねてきたシステムを捨てるという決断は簡単にはできないでしょう。しかし、これは「高いお金を出して買ったお気に入りのガラケーであり、通話もメールもできるから問題ない」と頑なにスマートフォンに変えないのと同じなのです。
ある旅館では、十数年前から使っているPMS(フロント会計システム)では、増加するインターネット予約のデータを取り込むことができず、FAXを見ながらPMSに手入力するという状態が続いていました。
古いシステムの改修には費用がかかり、その他にも今後導入を考えたい新しい機能の連携ができないことがわかりました。従来からの日常業務での利用にはほぼ不都合がないものの、不具合発生時などには問題が起こりました。
システム会社側で古いシステムを理解している人材が限定されていたために対応が遅く、度々対応が長引き業務に支障をきたしていたのです。そのため、将来を見据えて新たなPMSへの入れ替えを決断されました。
「攻めの投資」には、過去との訣別が必要となります。これは決して過去の否定ではありません。過去の仕組みを作り上げてくれた先人たちの尽力に敬意を払った上で、次なるステップに踏み出すための経営判断をする時が来ているのです。
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