旅館経営の知恵
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お届けする経営のヒント-
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人事評価 2
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
人事評価(人事考課)の一般的な概要と、それを旅館で導入する場合のアレンジについて、前回お伝えした。これに関連して、いくつか補足しておきたい。
まず「上位の役職者に関する評価」について―その役職に応じたタスクをそつなくこなしているという型にはまった評価だけでなく、より創造的な力を発揮してもらうための評価尺度を持ちたい、と述べた。これについて、例えばこんなのはどうか。
・社内変革を起こそうとする意欲がある。
・新しいことにチャレンジする姿勢がある。
・常に新しい情報や思考に基づく発案がある。
・率先して実行をリードする力がある。
なお下位レベルの人に関しては、職務に必要な知識や技能の習得度を客観的に評価することが可能、と述べたが、こういう人たちにも、右に準ずるような評価基準を設けることは望ましい。「そういう物差しで会社は評価する」という認識を持ってもらうのに有効なだけでなく、これに呼応する意欲旺盛な人材を若いうちから登用していく、またそれを周囲に納得させるための裏付けにもなる。
もう一つ、「人事評価の用い方」について―人事評価というものは、主に昇給や昇進、昇格判断のための査定として行われる。それは当然のことであって異論もないが、問題は、多くの会社で「査定評価するだけ」にとどまっていることである。つまりその結果が本人に知らされていない場合が、旅館に限らず多い。
人事評価は、評価することも大事だが、本人へのフィードバック(情報を戻すこと)が、それと同じくらい重要な意味を持つ。例えば次のようなことについて、本人に伝えられる場合とそうでない場合の違いをイメージしていただきたい。
・長所…この人が優れていると評価されている点
・短所…この人に欠けていると認められる点
・期待…この人には「こんな活躍をしてほしい」
・要望…この人には「こんな点を直してほしい」
ひと言で言えば、「評価を人材育成に生かせるかどうか」の違いである。性格、能力、働きぶり―自分のことを客観的に分かっている人は、そういない。それなりに捉えているとしても、会社が求める人材像に照らしてどうか、となると、ますます難しい。評価の内容を直接伝えることで、こうしたことを本人に自覚してもらうことができるのだから、その効果は大きい。
ただし、問題点や改善要望について伝えるに当たっては、言葉や話し方を慎重に選ぶ必要があることは、言うまでもない。あまりストレートにぶつければ、改善どころか本人のモチベーションを下げて「やる気喪失」の逆効果となったり、最悪の場合は辞職の引き金ともなりかねない。
基本に据えるべきは、会社と本人とが「互いにより良くなるため」という目的意識である。
人事評価について書いたのは、これが賃金制度の組み立て、あるいは再設計をする上で必要な手続きとなるからである。評価と給与、正確には「人材価値と給与」を整合させていくこと、またそれによって、より高い生産性を生み出していくことこそ、一連の制度設計の最も重要な狙いであることを忘れないでいただきたい。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2019年10月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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