旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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磨け! 独自価値(1)
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
毎日の売り上げをなるべく大きくするために、どこの旅館も鎬(しのぎ)を削っている。一般的にとられる方策は、お値打ち価格にしたり、何か特典を付けたりすることだ。いずれも広い意味で「価格競争」と言ってよい。日々の戦いとしては必要なことだが、これは一方で収益をそれだけ減らすことになり、これのみに頼っていてはいずれ経営の疲弊を招く。 戦いの方向としては「価格競争」ともう一つ、「価値競争」という選択肢がある、と前回述べた。ここで少し修正をお許しいただければ、「価値競争」という言葉では語弊があるので、「価値で戦う」と言い換えたい。では価値で戦うとはどういうことか…このことについて考えていく。
独自価値の条件
本年、弊社では「旅館の経営指針」の中で、「独自価値」というキーワードを提言させていただいた。これは二つの条件によって位置付けることができる。
・独自である=他所(よそ)にない。
・価値がある=お客さまに価値として認められる。
つまり「独自価値」とは、「よそになく、お客さまに価値として認められるもの」である。
「よそにない」―「よそ」として捉えるのはまず同業の旅館だが、近年では旅館とホテルの境目もあまりなくなってきた。またこうした既成の業種概念を超えたさまざまな近接業態、さらには異業種も競争相手として視野に置いて考えたい。
「よそにあるかないか」は、なにも日本や世界で唯一である必要を意味しない。例えば自館が商圏と捉える地域の中で、他にその価値を持っているところがなければ「ない」として構わない。また同類の価値であっても、質や量、あるいはこだわりの程度において、他を圧倒的に上回るレベルであれば、「よそにない」としてよいと思う。
「価値として認められる」―これは、「お客さまのニーズやウォンツにマッチするもの」と位置づけたい。つまりここで言う「価値」とは絶対不変のものでなく、人それぞれによって判断されるものだ。従って、大事なことだが、価値の大きさは、そこに注ぎこんだお金や労力に比例するものではない。「喜んでもらえれば、それが価値」なのである。
商品価値の仕分け
さて、この二つの物差しによって、商品としての価値は四つに分類することができる。それぞれに呼び名を付けさせていただいた。
(ⅰ)お客さまに価値として認められるが、よそにもあるもの=「同質価値」
典型的なものはガソリンだ。誰もが価値を認める必要なものだが、日本中どこで買っても、少なくともモノとしての品質には全く違いがない。住む場所から近いか遠いかという事情がからむので相場の地域差はあるにせよ、基本的には1円でも安いところが選ばれる傾向にある。
ここまで完全に均質な商品分野はあまり多くないが、そうでない商品でも「明確な違いが認識されないもの」は同質価値とみなされる。スーパーの店内に並んでいる大半の商品がこれであると言ってよい。こういうものは「コモディティ」と呼ばれる。乱暴な言い方だが「ありふれた商品」といった意味である。同質の価値は価格で比較される宿命にある。
残る三つの内容について、次回引き続きお伝えしたい。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2018年9月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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