旅館経営の知恵
-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-
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業務効率化への取り組み(34)業務を減らすⅴ
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
「当館のスタンダード」として行っている日常的な業務についても、見直しの目を入れてみよう、との視点で、前回に続きご提案する。
(ⅴ)サービス関連
到着時に部屋で行う呈茶――これをやめ、代わりにロビーでウェルカムドリンクを出すスタイルは多く見られるようになった。あるいはそれも無くして、部屋に置く飲み物の種類を増やしたり、セルフサービスのドリンクコーナーによって補うやり方もある。
また館内や客室内の説明を省いて説明書きに置き換える、さらには「部屋へのご案内をしない」ということも検討されてよい。
チェックアウトにおいては、自動精算機の活用も各地で見られるようになったので視野に置きたい。
布団上げは近年、チェックアウト後に行うところが増えてきた。入室時から布団を敷いてあるのはまだあまり見たことがないが、もしかすると今後はそういうスタイルも、ある種の「普通」になってくるかもしれない。旅館の客室におけるベッド化の流れは、布団の「上げ・下げ」という2度の業務を1度に減らす、また寝具の用意を夕食前後の忙しい時間帯の集中業務から、日中の余裕ある時間帯へと分散化させる業務合理化のねらいが底流にある。
以上で大方、食事提供以外の主なサービスポイントについてふれたことになるかと思う。
「お迎えしたらまずはお茶を出す」、「食事の間に布団の上げ下ろしをしておく」というのが古くからの旅館の、いや日本の文化的な慣わしであり、長年行ってきた旅館にとって、これをやめることには大きな抵抗があろう。やめると、年配のお客さまなどから「ここはお茶も出してくれない」といったご意見も時にはあるかと思う。じつはかく言う筆者も、旅館ではそうしたサービスを望む一人である。
が、考えてみていただきたい。全国を走る路線バスは、今でこそ自動音声アナウンスと料金表示盤、運賃箱(あるいはカードリーダー)により、運転手のみのワンマン運行だが、ふた昔ほど前は車掌(古くは女性のみ)が乗務して、バス停の案内や料金収受といった仕事をしていた。
またかつて多くのデパートには「エレベーターガール」と呼ばれる職業があり、エレベーターの昇降操作と乗降客への気づかい、各フロアの案内などを業務としていたが、今ではごく一部の高級デパートでしか見られない。
ここに挙げたようなサービスを、全ての旅館でやめるべきだなどと言うつもりはない。今なおエレベーターガールを置いているデパートのように、他がやめてしまった中で続けていることが店の格を高め、富裕なお客さまに足を運ばせる、あるいは他所より高いと知りながらも「そこで買う」重要な差別化理由になる場合もある。だからその必要性や効果、対するコストや労力などを、総合的に判断いただきたい。
「業務の効率化」というテーマからややそれた話になったが、言いたいのは「やるべきサービスを見極めよう」、「なんとなくやっているサービスを見直そう」ということである。その軸となるのは、「ウチはどんな旅館でいくのか」だ。これをしっかり据えよう。弊社が近年、何度も繰り返し提言していることである。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2018年2月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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