復旧工事と併せて高質化改修を実現する「水害復旧プロジェクト」
清流山水花 あゆの里(熊本県・人吉温泉)
令和2年7月の豪雨災害により甚大な被害を受けた「清流山水花あゆの里」。
「解雇はしない・社員を信じる・全ては考え方一つで変わる」という基本方針を決め、復旧工事と併せて災害前からの課題を解決へと導く高質化改修を行う「水害復旧プロジェクト」を立ち上げた。
水害復旧プロジェクト実現への課題
1.団体客の受入重視から「個人客主体の営業方針への切り替え」
2.宿泊単価の引上げの為の「提供商品レベルの向上」
①高質客室の比率アップ ②提供料理の方針転換 ③フリーサービスの充実
プロジェクトの根幹は、以前からの大きな課題であった「1.団体・グループ客受入重視」からの脱却、つまり個人客主体の営業方針への切り替えだった。しかし、時流を鑑みたこの大きな転換を成功させる為には、おもてなしや経営面・労務面に留意しながら「個人利用客の宿泊単価を引き上げること」が必須であり、「2.提供商品レベルの向上」が求められる。この「レベルの向上」を実現させるためには細分化された目標を定め、実践することが必要だ。そこで「①高質客室の比率アップ ②提供料理の方針転換 ③フリーサービスの充実」という目標に沿って、プロジェクトを推進した。
課題2-①高質客室の比率アップ:全客室の3割超を高質客室へ
既存客室をグレードアップする為に、特別室及び和室2間を「温泉露天風呂付スイートルーム2室」、和室2間を「温泉露天風呂付プレミアムルーム7室」に改装した。その結果、露天風呂付客室は21室、半露天風呂付客室2室となり、全75客室中23室、「高質客室」が3割超という目標である「比率のアップ」に成功した。
課題2-②提供料理の方針転換:厨房改修と作業動線の簡素化
2階和厨房と1階洋厨房の区分厨房形式だったが、メイン厨房(和洋厨房)として2階に集約。メインでは基本調理を行い、料理最終仕上げや盛付配膳は1階のサテライト厨房で行うオペレーションへ転換した。さらに料亭街の踏み込みを廃止し、レストラン部分は全て椅子、テーブル式のダイニングへ変更。デッシャプから全てのテーブルまでワゴンを利用して料理を運べるようになった。厨房改修とともに作業動線を簡素化したことで、サービス効率が飛躍的に向上した。
課題2-③フリーサービスの充実:焼酎の世界を楽しめるラウンジ
旧ライブラリーラウンジを、球磨焼酎を自由に楽しんでいただく焼酎ラウンジへ転用した。焼酎蔵を併設させ、球磨の水と風土から生まれた球磨焼酎の歴史や製法を学びながら迫力ある焼酎の世界を演出。焼酎サワーサーバー(抽出機)などを設置し、フリーサービス充実のシンボルとしてアピールした。
また、ロビーラウンジでは夕方と朝の時間帯にコーヒー、ジュースのフリーサービスを実施している。
球磨川とともに生きてきた人吉温泉、そしてあゆの里
今回の長期間の休業が逆に大幅な経営戦略、営業方針、運営体制の再構築をする機会となった。前述した課題の1及び2以外にも、施設復旧に留まらない高質化改修の為、天空テラス「KUMAGAWA」等も整備された。コロナ禍の厳しい状況下での休業を前向きに捉え、アフター・コロナの営業をどう展開していくか、役員一同で協議した結果は「水害復旧プロジェクトの実現」として示された。
清流山水花 あゆの里
- 所 在 地
- 熊本県人吉市人吉温泉
- 竣工
- 2021年7月
- 総投資額
- 約16.5億円
- 総合企画
- 株式会社 リョケン
- 設計監理
- 株式会社 石井建築事務所