宿泊を通じて地域の文化に触れる
旅館の「こころ」を表現した商品整備
庄川温泉風流味道座敷 ゆめつづり(富山県・庄川温泉)
砺波平野の奥座敷にひっそりと佇む温泉宿 「庄川温泉風流味道座敷 ゆめつづり」
五箇山のお膝元にあり、目の前には庄川峡の清流が流れる閑静な空間で、
ゆったりとした時を過ごすことのできるお宿として高い評価を得ている。
そんなゆめつづりがさらなる「個人客満足度の向上」、「ゆめつづりブランドの向上」を目指した商品整備に迫る。
お客様の変化に合わせた商品の造成
客室数29室という小規模施設ながらも、その立地環境から地元の団体ニーズも多く、個人・団体とバランス良く集客を続けてきたものの、近年の団体客の減少を補うだけの商品づくりに踏み切れず、収益が漸減傾向にあった。そのような状況を打破するため、コロナ禍の厳しい状況の中、個人客に特化した客室・貸切風呂のリニューアルを決断。
料金の取れる貸切風呂にチャレンジ
従来は高い稼働を維持していた貸切風呂も、近年はプラン特典等の実質“タダ”で販売するケースも多くなっていた。特典とすることでお客様はお得感を感じ、一定の売上には貢献していていたものの、その商品力は薄れつつあることを感じていた。
そこで、料金の取れる「貸切風呂」が提供できるよう、質を高める商品整備を実施。2ヵ所の貸切風呂をそれぞれ「木」と「石」をイメージしリニューアル。
従来は45分2,000円で販売していたが、リニューアル後は75分5,000円で販売。
これまでの45分という時間では、正味30分程しかお風呂に浸かる時間がなく、ゆっくりと過ごすことができないとの声も多く、それに適う販売へ変更。湯上りでアルコール・ソフトドリンク等のサービスを行うことで、貸切風呂での時間をより楽しめる仕掛けに。
景観のハンデを補い、満足感の得られる客室
リニューアル前は一般的な和室単部屋で、広さは約40㎡、12畳のアウトバスタイプ。ゆめつづりの中では一番宿泊料金の安い客室。
庄川を望む川側とは反対に位置する山側客室でもあったため、団体シーズンには一定の稼働があったものの、通常時は料金を下げて販売してもなかなか稼働の上がらない状況が続いていた。
一方で、朝や夕方の時間帯の山側の眺望には魅力があり、近年は数年前に改装した3階にある山側のベッド付客室の稼働が伸びてきたこともあり、客層を個人客に絞り、ベッド+畳リビング+ビューバスを基本に3室をリニューアル。
日本の伝統色の「あかがね」「くじゃく(あお)」「ぎんねず」の名前をモチーフに、それぞれ色調に特徴のある客室に仕上げる。
従来の団体客でも利用しやすい客室から、お二人でゆったりと寛げる客室に改装。
客室の広さは改装前と同じ40㎡のままと決して広くはなく、3室を2室にして客室の広さを1.5倍にするといった検討も行なったものの、広さを拡張するよりも、客室の質を上げて売上を伸ばしていくことを選択。
山側であることで積極的に販売しにくいという客室のハンデを克服する上でも、グレード感を高めることで稼働・単価の向上につながっている。
地元企業とのタイアップ
今回のリニューアルにおいては、観光業を通して地域の賑わいの創出にも寄与したいとの想いから、地元企業3社(石森石材、能作、モメンタムファクトリー・Orii)とのタイアップを行ない、個性的な建材や装飾品として随所に使用。
各客室のヘッドボードには、高岡で400年伝わる「能作」社の鋳造技術を取り入れた鋳物や、常に新しい魅力を発信し、進化し続けている「Orii」社の鋳造着色を取り入れた銅器を使用。貸切風呂には庄川地域で江戸時代から昭和初期まで採掘されていた石材「金屋石(かなやいし)」の建材を使用する等、改装へのこだわりが盛り込まれている。お客様に富山県、庄川地域により興味を持っていただくとともに、地元企業とのタイアップも積極的に進めていき、地元の「こころ」を最大限に愉しんでいただくことで、ゆめつづりの旅館としての「こころ」を今後も表現していく。
庄川温泉風流味道座敷 ゆめつづり
- 住 所
- 富山県砺波市庄川町金屋3531
- 客室数
- 29室
- 竣工
- 2020年8月6日
- 投資額
- 1.2億円