第90回 短観アンケート「2023年 秋の実績 忘新年会の状況 冬の見込み」
リョケンでは、全国の旅館・ホテル様を対象に、四半期ごとの実績や見込みをベースにした業界動向調査 「リョケン 短観アンケート」 を、継続的に行っております。このほど、第90回アンケート (11月実施分) の集計がまとまりましたので、以下の通りご報告させていただきます。
ご多忙な中でご協力いただきました皆様には、心より御礼を申し上げます。
<調査期間:2023年11月1日~2023年11月15日、送付数:(FAX)773軒、回答数:53軒、回答率:6.9%、(eメール)337軒、回答数:44軒、回答率:13.1%>
秋の実績 - 旅行需要は回復しつつも、人手不足が影響
秋(9月~11月)の実績についての回答をまとめました。今回調査結果とともに前回調査の「見込み」と前年調査の「実績」とを比較しています。
●基本宿泊単価・総宿泊単価
基本宿泊単価・総宿泊単価ともに、「上昇傾向」との回答が6割を超え、「下降傾向」との回答はごくわずかでした。引き続き、高単価化の取り組みが進められています。ただ、「人手不足のため素泊まりで販売することも多くなり、総宿泊単価が下降してしまった。」といったコメントもいただいています。
●客数傾向
客数傾向については、施設により回答が分かれました。渡航規制の緩和や円安の進行で、インバウンドが急増している地域もあるようです。
また、「人材確保が追いつかず客数を制限している」「人手不足で団体を受けられない」といったコメントをいくつかの施設からいただいています。
●規模別客数傾向
規模別の客数傾向(当館)では、大・中規模で「増加傾向」の回答が50%でしたが、小規模では38.1%に留まりました。コメントから、団体客は前年よりは多少回復しているものの、個人客は全国旅行支援停止の影響で伸び悩む傾向にあるようです。
●コメントから見える全体的な傾向
今回調査では、旅行需要はある程度回復したものの、人材確保が追いつかず、受け入れを制限しているとの施設が目立ちました。朝食付き・素泊まりで受けて、近隣でおすすめの飲食店を案内したり、客単価を上げて受け入れを絞ったりといった手法で人手不足対策を図る施設もあるようです。
忘新年会の状況 - コロナ前の水準には戻らず
忘・新年会の状況についての回答を右表にまとめました。前年調査の見通しと比較しました。
●客単価
客単価は前年見通しに対して、「上昇傾向」との回答は34.2%から47.1%に増加したものの、過半数を占めるには至らず、回答にはばらつきがみられました。「人手不足と経費上昇に伴い、単価を上げて受け入れを絞っている」といったコメントもいただいています。
●客数傾向
客数傾向は、「横ばい」の回答が最も多くなっています。「宴会売上は前年よりは回復したが、それでもコロナ前の4分の1に満たない」とのコメントもいただいており、宴会需要の復活には至っていないようです。そのような中、「忘新年会用にテイクアウトのオードブルを販売する」といった方法で売上増を図る施設もあるようです。
●コメントから見える全体的な傾向
コロナ下の入社で団体対応に不慣れな従業員が多く、人手不足も相まって宴会対応に苦慮していることがうかがわれます。そのような折、「2時間制により終了時間をコントロールする」「椅子テーブル宴会を内側通路のある配列で設営する」「ドリンクコーナーを配置して飲み物提供を効率化する」などにより、効率的な宴会運営を導入する施設も出てきています。
一方、忘新年会受け入れを止めた施設も増加傾向です。前年調査では、回答87軒うち9軒(10.3%)が忘新年会の受け入れが無い旨のコメントをいただいていたのに対し、今回調査では回答97軒のうち14軒(14.4%)が受け入れをしていないとのことです。
冬の見込み - 客数に慎重な見通し
冬(12月~2月)の見込みについての回答をまとめたものが右表です。
●基本宿泊単価・総宿泊単価
基本宿泊単価、総宿泊単価とも「上昇傾向」と回答した施設は約5割弱、「横ばい傾向」も含めると9割以上となりました。物価高騰が続いており、前回調査に引き続き、単価向上への意欲も高そうです。
●客数傾向
客数傾向(当館)については「横ばい傾向」が41.7%と最も多くなっています。全国旅行支援の停止に加えて、予約の間際化が進んでいるとのコメントもいただいており、慎重な見通しとなっています。また、新規施設が近隣にオープンしたとのコメントをいただいた施設もいくつかあり、近隣施設との競合も今冬の見込みの不安材料となっているようです。
また、客室等の改装を今冬実施するため、客数を制限する予定とのコメントも、いくつかの施設からいただいております。
●規模別客数傾向
規模別の客数傾向(当館)では、「増加傾向」との回答が大規模で34.6%、中規模で32.7%であったのに対し、小規模では19.0%と慎重な見込となっています。
●コメントから見える全体的な傾向
全国旅行支援の停止や団体需要の戻りの遅さ、物価高騰などの不安要素が重なり、慎重な見通しとなっています。そのような中でも、「スキー場のインストラクター付きの企画販売」「高付加価値化補助金を活用した客室リニューアル」などで単価アップ・集客増を図っている施設もあるようです。
今回調査では、いずれの項目においても、人手不足への苦慮がコメントからうかがわれました。宿泊業界全体で人手不足が深刻化している中、旅行需要の回復に伴い新施設の開業が相次いでおり、人材の取り合いの様相を呈しているようです。
そのような折、近隣の高校・大学で旅館ホテルの仕事説明会を設ける、従業員寮を改装するなどにより、採用対策、待遇改善を図り、人手不足解消に取り組まれている施設もあるようです。
施設からのコメント(抜粋)
今回も多くのコメントをいただきました。人手不足で予約を制限したり、忘新年会の受け入れを止めたりといったコメントが目立ちました。
【いただいたコメント】
●冬期はオフシーズンということになっていましたが、昨年ぐらいからインバウンドが沢山入り始めました。(山形県・小規模)
●個人客はかなり戻ってきた。団体客については、戻ってきている分野(業種)とまだ戻ってきていない分野がある。(栃木県・小規模)
●観光型大型ビジネスホテルやグランピング施設など、多様な新規施設が数軒開業した。(埼玉県・小規模)
●最近の集客方法がわからない。ネットエージェントとの関係は大切だが、それ以外の方法を考えあぐねている。(千葉県・小規模)
●インバウンドは更に増えて行くと思われます。今冬、部屋をリニューアルし、単価アップを図りながら、サービスレベルのアップに努めています。(広島県・小規模)
●団体客が増えたので基本料金は下降、総単価は若干の上昇。10月、11月と各セクションの人手不足で予約をセーブせざるを得ない状況。(富山県・中規模)
●地域的にはコロナ禍前に戻りつつあるが、人手不足のため単価UPできるお客様のみに集客を絞っている。(兵庫県・中規模)
●宴会席はコロナ後、人員減のため受入れできない。全国旅行支援がなく、12月以降の見込みが厳しい。(岡山県・中規模)
●新しいホテルのオープンラッシュにより人手不足が加速しているのと、取引業者の人手不足も加速している。(大分県・中規模)
●12月まで需要が高かったのですが、1月は下降気味の手応えを感じます。近年直近の予約が増加傾向にあるので期待値はあり。(佐賀県・中規模)
●個人客中心となり、グループ団体の復活がまだのため、客数、総売上減少。忘新年会は地元を中心に営業を図る。(群馬県・大規模)
●団体客がほぼ2019年のペースで入ってきている。個人については昨年ほどではないが、決して悪い状況ではない。(静岡県・大規模)
集客増や人手不足対策を始めとする、様々な難しい課題に取り組まれている折、本調査にご協力いただきました皆様には、心からの御礼を申し上げます。
弊社では今後も各種アンケートを実施してまいります。今後ともアンケートへのご協力を 賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。