株式会社リョケン

第89回 短観アンケート「2023年 夏休みの実績 秋の見込み」

リョケンでは、全国の旅館・ホテル様を対象に、四半期ごとの実績や見込みをベースにした業界動向調査 「リョケン 短観アンケート」 を、継続的に行っております。
このほど、第89回アンケート (8月実施分) の集計がまとまりましたので、以下の通りご報告させていただきます。
ご多忙のところご協力いただきました皆様には、心より御礼を申し上げます。

夏休みの実績 - 団体客復活の一方、旅行支援終了による陰りも

夏休み(7月下旬~8月)の実績についての回答をまとめました。今回調査結果とともに前回調査の「見込み」と前年調査の「実績」とを比較しています。

 

●基本宿泊単価・総宿泊単価
基本宿泊単価・総宿泊単価ともに「上昇傾向」との回答が6割以上を占め、前回春の調査時の見込みを上回りました。「下降傾向」との回答は1割未満でした。 「物価高騰により客室単価を上げた」といったコメントも目立ち、単価向上への取り組みが進められています。

短観89夏1

●客数傾向
客数傾向(当館)では、いずれの傾向も過半数を超えず、回答にばらつきがありました。「増加傾向」との回答は、近畿地方では76.5%あった一方で、関東・北陸・中国地方では3割以下となっています。

 

●規模別客数傾向
規模別の客数傾向(当館)では、「増加傾向」との回答は大規模施設で63.0%、中規模施設で50.0%に対して、小規模施設では20.0%となっており、約8割の施設が「横ばい傾向」か「減少傾向」と、厳しい状況が窺われます。

 

 

●コメントから見える全体的な傾向
全国旅行支援の終了も相まって、特に個人客向けの小規模施設に関しては、客足が伸び悩んだ施設も見られました。大規模・中規模施設では、コロナ感染症の5類移行により団体・小グループ旅行が増加し、客足が戻りつつあるように窺われます。一方で、人手不足で予約を受けきれないといったコメントもいただきました。朝食付き・素泊まりで予約を受けたり、ダブルワーク希望者を採用したりといった手法で、人手不足対策を図る施設もあるようです。

短観89夏2

秋の見込み -物価高続き、見通し不安も

秋(9月~11月)の見込みについての回答をまとめたものが右表です。

 

●基本宿泊単価・総宿泊単価
基本宿泊単価、総宿泊単価ともに「上昇傾向」の見込みが過半数を占めるという回答結果でした。物価高騰が収まる見込みも薄く、当面は単価向上への意欲も高そうです。

また、高付加価値補助金を活用し、高質化による価格転嫁を図っているとのコメントもいくつかの施設からいただきました。

 

短観89秋1

●客数傾向
客数傾向(当館)では、「横ばい傾向」との回答が最も多くなりました。秋は団体需要が高く、団体客は回復傾向にあるとのコメントをいただいておりますが、全国旅行支援の終了に加えて、予約が間際化しているというコメントもいただいており、慎重な見通しの施設が多いようです。
一方、地域によりインバウンドが増加し、客数が増えてきているというコメントも見られました。

 

●規模別客数傾向
規模別の客数傾向(当館)では、規模が大きいほど、「増加傾向」と回答する比率が高くなりました。大規模では48.1%が「増加傾向」と見込んでいるのに対し、小規模では26.7%と慎重な見込状況となっています。

 

●コメントから見える全体的な傾向
全国旅行支援の停止や物価高騰が不安要素となり、先行きが見通せないとのコメントが多く見受けられました。予約の間際化も相まって、全体的に慎重な見通しとなっています。そのような中でも、様々な手法により集客増に取り組んでおられることがコメントから窺われました。一例としては、「野菜収穫や星空鑑賞などの体験を取り入れる」、「設備投資による高付加価値化を図る」、「メルマガによる早期受注を図る」、「インバウンド誘致に力を入れる」といったものがありました。

短観89秋2

今回も多くのコメントをいただきました。

 

【いただいたコメント】

●コロナ5類移行で小グループが増えている。コンパニオンを手配するところも出てきた。予約は直前が多い。(静岡県・小規模)
●お盆やイベント時期に集中し、夏休み後半の伸びが見えない。(新潟県・小規模)
●物価、光熱費の上昇のため、少しづつ客単価を上げ、現状の稼働率を維持している。(静岡県・小規模)
●夏休みはかなり忙しく、例年以上に予約が多い。1泊2食で受けられない分は素泊まり・朝食付きプランで稼働を上げている。(兵庫県・中規模)
●お客様が割引慣れして、定価を払うのに抵抗があるもよう。(栃木県・中規模)
●夏が終わり閑散期となる時期なので、メルマガを中心に早期受注を図る。グループ、団体も復活傾向にあり、幅広い客層の取り込みを促進する。(静岡県・中規模)
●人手不足と働き方改革により予約を受けきれない。(兵庫県・大規模)
●市として高付加価値補助金の対象となったことで、設備投資や付加価値向上による価格転嫁が出来ていると感じる。(岩手県・大規模)
●夏休みは、花火大会やお盆時期は順調に推移しているが、その他日程については、空いている日も目立っており、料金調整をしている。また、直前で予約が増える傾向もあり。(静岡県・大規模)
●グループ・団体需要も徐々に回復傾向にあり客数は増加傾向。一方、個人旅行は全国旅行支援の終了の反動から弱さもあり。(石川県・大規模)

コロナ感染症の5類への移行に伴い、旅行需要回復が期待されている一方で、物価高騰や人手不足への対応、全国旅行支援終了後の予約促進など、難しい課題に取り組まれていることが窺われます。本調査にご協力いただきました皆様には、心からの御礼を申し上げます。

弊社では、ひき続き皆様に有益な情報をお届けできるよう活動してまいります。今後ともアンケートへのご協力を 賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。