株式会社リョケン

食べるお宿 浜の湯

50室を超える旅館、あえて「部屋出し」へのこだわり
浜の湯は、もっと浜の湯へ

食べるお宿 浜の湯(静岡県・伊豆稲取温泉)

早くから個人客重視路線を歩み、独自のポリシーで顧客層の圧倒的な支持を得てきた「食べるお宿 浜の湯」。
第5期投資のねらいを「さらなる個人客満足」、そして「質をともなう浜の湯ブランドの向上」と位置付けた。

第5期設備投資で意図した3つのテーマ

1.個人客志向の色合いをいっそう強める。
2.客室商品力の強化によって、旅館の市場価値を高める。
3.厨房の拡充により、料理品質の向上と調理作業の効率化を実現する。

構想3年、最初のプランからオープンまで3年半

投資の方針検討は着工の3年前から始まった。
「3年後に設備投資を行いたい」――いくつかの背景から導き出された鈴木社長の投資時期判断。
柱となる方針は当初からはっきりしていた…
「スタイリッシュな中で『和の趣き』を出したい」
「『50室の個人旅館』をつくりたい」
「50室」とはもののたとえである。早くから個人客路線に軸足を置いてやってきた浜の湯。この時点ですでに57室ある旅館だったが、あくまでも「個人旅館」としてやっていく考えが、この時あらためて示された。
翌年3月より具体的なプランの検討を開始。以来ほぼ毎月修正を重ね、最終決定となったのはじつに第16案。リョケンがお手伝いしてきた設備投資の中でも異例の長さであった。

浜の湯・バーラウンジ「シーアンカー」

「部屋出しにこだわる」…を軸に、品質を高めていくこと

鈴木社長の考える「個人旅館」とはいかなるものか…それは個々のお客さまに徹底的にフォーカスし、一人ひとりの望みや好みをかなえる宿であること。1度目よりも2度目、2度目よりも3度目に「もっと良さを感じてもらえる宿」になること。
この旅館思想を貫くため、施設は「食事の部屋出し」をあえて基本に据えた。部屋出しをやりやすくするためだけではない。「和室での作法」をお客さまに感じていただける部屋づくりにこだわったのだ。

接客があるから、お客さま担当制だからこその社員満足

浜の湯の旅館づくりの思想は、お客さまと社員との間にパーソナルな「接客コミュニケーション」があるからこそ実現されるもの、と鈴木社長は考える。それを可能にするのが、客室での食事提供をはじめとする接客場面での会話なのである。
だからこのご時世で、浜の湯の客室係(仲居)は、到着時のお迎えからお見送りまで通しでお世話する「お客さま担当制」だ。じつはこれを核とする仕組みが、社員の高いモチベーション、自律性にもつながっている。現に新卒採用でも、こうした「浜の湯ならではのやりがい」が力強く語られ、それを求めて志願する大学・専門学校生は毎年多い。

浜の湯では客室係はお客様担当制

全客室の3分の2を改装

今回の投資では、客室商品力を高く保つことも大きなテーマと位置付けられた。改装前、57室あった客室の3分の2にあたる38室に改装の手を加え、全般的な底上げを図った。このうち2室は、新たなフラッグシップ客室としてデビューした。
最上位ランクとなる客室「海音(カノン)」は149㎡。それまでの2室を合体して、ゆったりしたリビング、ベッドルーム、露天風呂とテラス、そして食事提供のための和室を備えている。

浜の湯・客室「海音」リビング 浜の湯・客室「海音」露天風呂

料理品質の向上と調理効率の向上

厨房の拡充も行った。厨房は、過去の増築による規模の拡大で相対的に狭くなり、問題を抱えていた。鮮魚などの冷蔵庫は地下にあり、2階厨房との間を階段で毎日20~30回も往復しなければならない状況にあった。
浜の湯のキャッチフレーズは「食べるお宿」。魚などを良い品質状態でお客さまに提供することは重要なテーマだ。そこで厨房と同じフロアにある大宴会場の一部を、そっくり冷蔵庫ゾーンとして改造することを提案し、実施することになった。。検討に当たっては宴会場に養生テープを貼り、実際の冷蔵庫の大きさを確かめた。また調理・盛付エリアにもレイアウト変更を加えた。これらにより、一気に料理品質と調理効率の向上が実現された。

終盤に決断したロビー改装

検討の最終段階、投資の内容と予算もほぼ固まりかけてきたころ、ひとつの大きな決断が行われた。フロント・ロビーと、フロントに隣接する売店の改装である。
初期の段階では玄関まわりのイメージチェンジが検討されていたが、予算配分その他の事情から見合わせることとなり、一旦はあきらめて、客室商品力のアップと、常連客向けプライベートラウンジの新設を軸に据えてきた投資構想だった。しかし数億円かけて行う投資に、これではどうしても何かが足りない。やはり「顔」となるロビー等のイメージ刷新が必要と考え、思い切って改装を進言、これに社長が決断を下した。
フロントと売店の位置を入れ替えたうえ、フロントカウンターを低めとし、そこに椅子を置いて、「個人旅館」らしいプライベート感を演出した。
投資額は当初予算より5千万円ほど大きくなったが、結果的にこれが今回のリニューアルイメージを決定的に印象付ける効果を生むことになったといえる。

浜の湯・ロビーラウンジ 浜の湯・フロントカウンター
食べるお宿 浜の湯
食べるお宿 浜の湯
住 所
静岡県賀茂郡東伊豆町稲取1017
客室数
56室
着工
2016年4月
開業
2016年7月16日
総投資額
約5億円