第91回 短観アンケート「2023-2024年 冬の実績・春の見込み」
リョケンでは、全国の旅館・ホテル様を対象に、四半期ごとの実績や見込みをベースにした業界動向調査 「リョケン 短観アンケート」 を、継続的に行っております。このほど、第91回アンケート (2月実施分) の集計がまとまりましたので、以下の通りご報告させていただきます。
ご多忙な中でご協力いただきました皆様には、心より御礼を申し上げます。
<調査期間:2024年2月1日~2024年2月15日、FAX回答数:48軒、回答率:6.2%、eメール回答数:47軒、回答率:13.5%>
冬の実績 - 単価向上は進むも、地震による客数減が顕著
冬(12月~2月)の実績についての回答をまとめました。今回調査結果とともに前回調査の「見込み」と前年調査の「実績」とを比較しています。
●基本宿泊単価・総宿泊単価
基本宿泊単価・総宿泊単価ともに、「上昇傾向」との回答が6割以上を占めました。仕入原価高騰に伴う価格転嫁や、設備投資による高付加価値化を実施したとのコメントも多くあり、引き続き単価向上への意欲が高いことがうかがえます。
一方で「人手不足により2食付きが取れず、宿泊単価が昨年より下落した。」とのコメントもいただいています。
●客数傾向
今冬は、円安によりインバウンドが好調な一方で、能登半島地震による影響を受けた施設が多くあること、昨冬から実施されている全国旅行支援が大半の都道府県で停止されていることなどから、「増加傾向」は約4割に留まりました。北陸地方以外でも、主に個人客に旅行機運の低下が見られるとのコメントをいただいています。
●規模別客数傾向
規模別の客数傾向(当館)では、規模が小さいほど「減少傾向」が多い結果となりました。中・大規模施設では団体や忘新年会が復活傾向とのコメントがいくつかの施設で見受けられた一方で、小規模施設では能登半島地震や全国旅行支援停止の影響を受けたとのコメントが目立ちました。
春の見込み - 地震の影響および全国旅行支援終了で不透明
春(3月~5月)の見込みについての回答をまとめたものが右表です。
●基本宿泊単価・総宿泊単価
基本宿泊単価、総宿泊単価ともに「上昇傾向」が5割を超え、「下降傾向」との回答はごくわずかでした。商品力強化への意欲は高く、諸物価高騰、光熱費上昇もあり、引き続き単価向上への取り組みが多くの施設で進められているようです。
●客数傾向
客数傾向について、当館・地域のいずれも「横ばい傾向」との回答が約半数となっています。全国旅行支援が今年は実施されないことに加え、能登半島地震による旅行気運の減退などの不安要素もあり、慎重な見方となっています。北陸3県・新潟県で実施予定の「北陸応援割」については、期間や予算が限られていることから、効果は限定的とのコメントもありました。
●規模別客数傾向
規模別の客数傾向(当館)では、「増加傾向」との回答が大規模で約4割、中・小規模では3割以下となっており、慎重な見方が多くなっています。
●コメントから見える全体的な傾向
昨年12月までは、インバウンド、団体、忘新年会の入り込みが好調にあった施設も多く見受けられたものの、1月の能登半島地震による予約キャンセルや旅行気運の低下などにより、客数減となった施設が多いようです。北陸地方以外の施設でも、数百名単位でキャンセルが出たとのコメントもいただきました。今年は全国旅行支援が実施されないことから、今春の見通しが厳しい施設が多くなっています。なお、3月より実施予定の「北陸応援割」については、対象地域の施設では概ね好意的な一方で、地域・期間・予算が限られていることから、効果は限定的との見方もありました。 また、人手不足での営業制限や物価高騰、光熱費の上昇といった問題が深刻化していることも指摘されていますが、そうした中でも、施設改修などの商品力整備による単価向上や、休館日の増加による従業員のモチベーション向上などの努力が進められていることがうかがえました。
施設からのコメント(抜粋)
今回も多くのコメントをいただきました。地震の影響を憂慮する声や、物価高騰・人手不足対策に関するコメントなどが多くありました。
【いただいたコメント(抜粋)】
●国内団体が弱くなってきている。インバウンド強化も必要。今後、エリアとしてのアプローチが重要と感じる。(北海道・大規模)
●リピーター様へ当館独自のクーポンを発行した。宿泊客の50%はリピーター。インバウンドはあまり来ていない。(宮城県・小規模)
●冬は地元や隣県客の割合が多い時期だが、地元・隣県の人口減少や実質賃金の減少が続き、年々厳しくなっている。さらに今年は能登半島地震が影響。(山形県・小規模)
●北陸応援割の開始についての情報がなかなか入ってこない。急な開始となると、対応に追われるのではと不安。宿泊支援後の反動が大きいのではと思う。地元自治体への働きかけをしている。(新潟県・中規模)
●1月1日の能登半島地震により、観光を目的としたお客様はほぼ蒸発。震災復興関係者の宿泊を受け入れ。春の見込みは正直どうなるか分からない。(富山県・中規模)
●能登半島地震による風評被害のため、春の見込みは非常に厳しい。(石川県・大規模)
●基本料金の値上げ+年末年始の大幅値上げを実施するも、OTA・googleの口コミ評価に大きな変動なし。むしろgoogleは上昇。(茨城県・小規模)
●同エリア内にオールインクルーシブに変更した宿があり評価も上がっている。春の動きを見ながら場合によっては当館での(オールインクルーシブ)導入も検討の余地あり。(茨城県・小規模)
●人手不足により、空室があっても2食付きが取れず、素泊まりプランしか販売できないことも多々あり、宿泊単価が昨年度より若干下落している。(栃木県・小規模)
●仕入原価高騰に対して宿泊料金を値上げ、集客に特化し宣伝広告などをしっかり行い先行取り込みを強化した。(栃木県・大規模)
●月の休館日を去年の1月から1日増やしたが、客数は増えた(稼働率上昇した)。(長野県・小規模)
●週末、繁忙日、繁忙期とオーバーツーリズムになっていると感じる。周辺観光スポット、レストランに入れない。渋滞がひどく車が動かない。(山梨県・大規模)
●自社会員組織、公式ホームページ及び各ネットサイトからの受注を中心として販売戦略を取る。稼働を抑えながら客単価アップで目標達成ができるように努めている。(静岡県・中規模)
●インフルエンサー広告が成功。大幅な上昇傾向にある。(静岡県・中規模)
●(地域の動向として)団体の取れる旅館は増、小間のみは横ばい傾向の様子。(静岡県・中規模)
●設備投資効果による単価アップにより、秋から冬にかけては、コロナ前を超える売上げ。客数はコロナ前を超えず。(滋賀県・小規模)
●課題は人材難。いかに業務効率を上げるか、高付加価値営業をするか。(兵庫県・中規模)
●販促を外注する宿が増加し、競争が激しくなっている。(和歌山県・小規模)
●コロナ5類に移行して初の年末年始を迎え、忘年会、新年会は一定の復活傾向は確認できた。反面宿泊は曜日の並びと新年2週目の連休にゲストが分散したせいで、タイトな稼働日は比較的少なかった。(島根県・大規模)
●企業旅行を主とした一般団体の取り込みに注力。Webマーケットのリードタイム延長傾向に柔軟対応。(島根県・大規模)
集客増や人手不足対策を始めとする、様々な難しい課題に取り組まれている折、本調査にご協力いただきました皆様には、心からの御礼を申し上げます。
弊社では今後も各種アンケートを実施してまいります。今後ともアンケートへのご協力を 賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。