遊休施設をターゲット顧客にあわせて改装
遊休施設の有効活用事例(施設数・5軒)
団体客の減少により、稼働率が極端に低下してしまった館内のクラブやカラオケルーム。使い道がなく、とりあえず倉庫や空きスペースとなっている箇所。そういった有効活用されているとは言い難い箇所を、顧客ニーズに対応した設備に変更することで、収益力の向上はもちろん、運営効率や顧客満足度の向上にもつながった事例を紹介いたします。
INDEX
1.グランディア芳泉(福井県/あわら温泉)
Before:クラブ / After:ダイニング
グランディア芳泉様では、新型コロナウィルスの発生以降、団体客の大幅な減少と感染防止対策により、館内のシアタークラブが稼働しない施設になっていました。
そこで、個人客への料理商品力の向上をすべく、ダイニングへの転換を計画。館内3つめの食事処として「ダイニング福樂」をオープンさせました。改装の際は、既存のカウンターエリアやパントリーの区画はそのまま残し、投資資金の抑制を図りながらも、効果のある改装事業を目指して進めました。
オープン第1弾の献立は、希少な牛肉として知られる「若狭牛」A5ランクのしゃぶしゃぶをメインで楽しむ料理を提案しています。あわせて、料理に飲物を合わせるペアリングを、お客様自身の好みで楽しんでいただけるよう「セルフ・ペアリング」と命名して提供しています。
また、「ダイニング福樂」では、”お客様満足”と”効率的運営”の両立を図ることを目指しました。夕食時には他の食事処と別邸の部屋食に調理人が張り付きとなるため、基本的に提供スタッフのみで運営を行えるように工夫をしました。食事提供の流れをしっかりと決めることで、マルチタスクと応援体制を実現させ、お客様の人数に合わせて可変的に運営を行えるようにしています。さらに、見渡しの良いダイニング・ホールとすることで、お客様の食事の進み具合がわかるようにし、タイミングの良い料理提供を可能としました。
2. 和泉屋(新潟県/よもぎひら温泉)
Before:売店とクラブ / After:ラウンジ・日本酒バーとショップ
和泉屋様では、60歳~70歳代のリピーター客が顧客の主力となっており、短期的にはコロナ禍での外出減による客数減、中長期的には高齢化による先細りが懸念されていました。
そこで、新たな客層を取り込み、売上の柱の一つとしていくための取り組みとして、従来、団体客の二次会処として利用していたクラブを、新たに地産品をセレクトしたショップにリニューアルしました。
この新しいショップの誕生により、旧売店はゆったりとしたラウンジに改装。窓際の席をカウンター形式とし、ワーケーションやブリジャー需要にも対応できるものにしています。また、夕食やお部屋で味わうお酒選びを楽しめるよう、滞在中いつでも長岡の地酒を利き酒できる日本酒バーを新ラウンジに備えました。
新ショップでは、これまでの知人や家族へのお土産品を揃える売店ではなく、地場産品を中心に自分づかいの購入を意識したセレクト商品メインの展開に変更しました。
店内の正面には「長岡地酒コーナー」を設け、長岡市内16 酒造すべての銘柄を揃えています。1合瓶や缶入りの冷酒も揃え、部屋呑みも楽しめる提案をしています。また、近隣の神社と地元製菓会社とのオリジナル商品も開発し、地域との一層の連携強化をすすめました。
オープン後はお客様の来店数や滞在時間も増え、購入商品も大きく変化しています。
3. 金太郎温泉(富山県/魚津市)
Before:売店とナイトクラブ / After:ステイラウンジとギフトショップ
団体客が減少し、売上低下に歯止めがかからない中、営業収益内の少額投資でいかに個人客対応を図っていくか。金太郎温泉様では、経営革新計画を2009年に策定し、段階的な設備投資による個人客対応を行ってきました。
しかし、1Fフロント・ロビーから第二別館・大浴場へ繋がる動線上は、多くのお客様が通られることから、大がかりな改装ができず、ナイトクラブ・売店・朝市など、昔ながらの温泉旅館の施設が残っていました。この「お客様の主要動線」の改修による店格の向上は積年の課題となっていました。
そのような折、コロナ下の大幅な客数減を逆手に取り、1Fのパブリックスペース改装を決断。ポストコロナのさらなる個人客化を見据え、「リ・ボーンプロジェクト」と題した改装を実施しました。そして2022年6月、新売店「Gift shop 北前船」とラウンジ「Stay Lounge MOKU」をオープンさせました。
「北前船」では、スタッフ自ら買付けた富山の逸品を揃えており、従来の旅館売店とは一線を画す品揃えとなっています。「MOKU」では、フリーサービスの飲み物を用意するとともに、Wi-Fi環境を整え、リモートワークでの利用も可能な場としました。
4. ホテル金波楼(兵庫県/日和山温泉)
Before:ナイトラウンジとカラオケバー / After:リビングパブとヨガスタジオ
ホテル金波楼様では、個人客を主力の顧客として見据えつつ、自館のターゲット分析から団体客の集客も戦略として明確に意識していました。
そのような折、従来のナイトラウンジは稼働率が落ちており、若い世代の嗜好の変化にあわせた二次会会場の提案が課題となっていました。また、周辺に飲食店がなく、「夕食なし」の個人客への対応も課題でした。
そこで、人数・年齢層に関わらず、館内で夕食(軽食)を手軽に楽しみながら過ごせる場として、ナイトクラブを「LIVING PUB The Walrus Club (ザ・ウォルラスクラブ)」としてリニューアルし、2021年7月にオープンしました。
「リビングパブ」では、日中は「ワーケーションタイム」として、コワーキングスペースとしても無料開放しています。
19時以降は「パブタイム」として、大型スクリーンの映像や、さまざまなカードゲームなどを楽しめる場としました。映画のエピソードなどにちなんで各種取り揃えたアルコールをはじめ、ドライカレーやピッツァ等の食事メニューを用意。夜食としてだけでなく、「夕食なし」で宿泊しているお客様の軽い夕食ニーズにも応えます。
注文時には、ルームキーホルダーに仕込まれたICチップをかざすことで、簡単に部屋付け精算を可能としました。これにより現金の扱いを極力無くし、ワンマン運営を実現しています。
また、ナイトラウンジと同様に、お客様のニーズの変化により、近年活用が十分にできていなかったのが、カラオケバーでした。こちらは、海の絶景を楽しめる点を活かし、開放的なヨガスタジオに改装。ヨガ以外にも多目的に活用できるスペースとして、新たな館内での過ごし方の提案が可能となりました。
5. ふきや(神奈川県/湯河原温泉)
Before:屋上の空きスペース / After:足湯テラス
ふきや様は客室数20室の小規模旅館ではあるものの、貸切露天風呂をはじめとする七つのお風呂めぐりなど、充実した温浴施設がお客様から好評な一方、お客様が自由にくつろげる場所が少なく、そういった施設の提供が課題となっていました。
そうした中で、2021年4月に近隣の万葉公園に、コワーキングスペースや読書・仕事がしやすいテラスを複数備える「湯河原惣湯Books and Retreat」がオープンするという、地域内でのワーケーション気運の盛り上がりもあったことから、ワーケーションにも利用できるパブリック施設を計画しました。
ふきや様では、屋上スペースが、山間の眺望で四季の変化を感じられる雰囲気の良いロケーションではあったものの、有効に活用されていませんでした。そこで、この眺望を活かしつつ、足湯に浸かりながら会議や仕事もできる「足湯会議スペース」も備えた「ルーフトップテラス」として整備しました。これにより、温泉を使った新たなくつろぎスペースを提供するとともに、これまでとは異なる客層の獲得も図りました。
施設収益力強化支援プログラムのご案内
リョケンでは、館内の遊休施設を診断・調査し、有効活用の方向性をご提案する「施設収益力強化支援プログラム」をご用意しております。
▶▶▶詳細はこちらから
遊休施設の有効活用事例
- 遊休施設の有効活用事例