多様化するお客様の「館内の利用ニーズ」に寄り添うために
ホテル金波楼(兵庫県・日和山温泉)
商品力を向上させる為の「団体客および個人客の館内の利用ニーズへの対応」と「利用度の低下していた施設の活用」。
多くの旅館・ホテルが収益性を高める為に、個人客へシフトチェンジする中、ホテル金波楼は、個人客路線を意識しつつ、自館のターゲット分析から「団体客の集客」も戦略として明確に意識。そこで耐震工事と合わせ、「多様化する団体・個人のお客様のニーズ」を念頭に、「商品力を向上させる場づくり」を目指した。
商品力を向上させる「場づくり」への課題
1.団体客および個人客の館内の利用ニーズへの対応
2.利用度の低下していた施設の活用
「団体客」の着目すべきポイントは「若い世代の二次会利用のニーズ」。団体といっても、やはり「個」の集まり。例えば、宴会の後は全員で「ナイトラウンジやカラオケバー」へ、といったかつての行動パターンは近年、激減した。同じ空間にいながらも、「個」それぞれの過ごし方ができる「場」が求められていた。
また「家族やカップル、友達同士等が楽しみながら過ごせる場の提供」。これは、「素泊まり個人客」にも当てはまるが、施設周辺に飲食店がない為「館内で手軽に楽しめる夕食(軽食)」が必要だった。団体・個人のそれぞれのお客様のニーズを把握し、2つ目の課題である「利用度の低下している施設の活用」に照らし合わせ、「ナイトラウンジ」の改装を方向づけた。
「働く・食べる」が共存する新しい時代の旅館の「場」づくり
「ナイトラウンジ」は、「LIVING PUB The Walrus Club (ザ・ウォルラスクラブ)」へ。日中は「ワーケーションタイム」として、宿泊客には、近年ニーズが高まったワークスペースを無料開放し、19時以降は「パブタイム」として、アルコールはもちろん、ドライカレーやピッツァ等を用意。
効率的にサービスを提供するために
The Walrus Clubでの軽食・ドリンクは、カウンターで受け渡すセルフ方式(コーヒーは無料、ワインはコイン式)に。また、客室での呈茶をやめ、フリードリンク形式にすることで業務の効率化を図った。機能面では、ルームキーホルダーのICチップで簡単に部屋付け精算ができる「宿泊客が利用しやすい方法」を採用。現金の取り扱いを極力少なくできたことで効率的なワンマン運営体制を実現した。
団体客に親睦と交流をはかるひとときを
The Walrus Clubに用意されているのが、カードゲームやボードゲーム、自動演奏機能を装備したアンティークピアノ、隣接するマリンワールドや但馬地方の大型映像を投影するプロジェクター。同じ空間にいながらも、ひとりひとりが多様な過ごし方ができる「新しいスタイルの二次会ゾーン」を目指した。
個人客化、その先の課題を解決するために
個人客へのシフトを進めるにあたり、課題となっていたのが食事会場。繁忙期には、ダイニングが席数不足をきたし、売上、運営効率の両面で大きなネックに。そこで、コンベンションホールの一部を食事会場としても利用できるよう改装。併せて、朝食レストランもスペースを拡張した。
SNSでの拡散も意識した写真スポット
海の景色の妨げになっていたコンベンションホールの控え室を廃止。広大な日本海と龍宮城伝説が伝わる後ヶ島を望む「龍宮テラス」とした。思わず写真を撮りたくなるスポットとして整備した。
館内での新たな過ごし方を「ヨガスタジオ」で提案
ナイトラウンジと同様に利用度の低かった「カラオケバー」。海を目の前にするロケーションを活かし、開放的なヨガスタジオへ。設置されたモニターでオンラインレッスン動画を視聴しながらヨガを楽しむのはもちろん、多目的に活用できるスペースとして館内での新たな過ごし方が可能となった。
オンライン施設見学
▶関連記事▶第一期工事「ロビー・ラウンジをリニューアル」
▶関連記事▶第二期工事「パブリック施設を大幅リニューアル」
ホテル金波楼
- 所 在 地
- 兵庫県豊岡市日和山温泉
- 客室数
- 70室
- 竣工
- 2021年4月
- 総投資額
- 約12億円(第一期・二期工事合計)
- 総合企画
- 株式会社 リョケン
- 設計監理
- 坪山知治建築設計事務所