株式会社リョケン

斎藤ホテル

客室改装による営業戦略のシフト
“新たな客層開拓”への戦略的なチャレンジ

斎藤ホテル(長野県・鹿教湯温泉)

自力で顧客を生みだすことが求められる立地。安定した常連客層は存在するものの、将来に備えて構造を変えていく必要から、新客層の開拓に挑んだ。そのねらいをこめて投入した戦略商品は、新客室フロア「溪-Kei-」。

鹿教湯温泉に「恩返し」するため投資をしていきたい…

初回のご相談時に社長からお聞きしたビジョンは大きく3点-(1)今後5~10年で積極的な設備投資を重ねていきたい、(2)地域も活性化して、20年後には鹿教湯温泉に30万人のお客様を実現したい、(3)経営を引き継ぐことになった南條旅館の再生も図りたい。とりわけ印象深かったのは、「斎藤ホテルが今日こうしてあるのは地域のおかげ。だから鹿教湯温泉に『恩返し』する意味で投資をしていきたい」との強い思いであった。

幹部による「投資会議」で1年間練った方向性

やるからには、経営の方向と商品の位置づけなどをしっかり見極めたい。

そこでこの時から幹部社員を交えた「投資会議」を重ね、紆余曲折を経て、客室1フロアの改装を中心とする商品整備へと方針を固めていった。
設計プラン着手まで1年余り―その過程では、いくつかの商品整備を将来課題として位置付けて実施時期の想定、また第2レストランの新設なども最後まで本気で検討された。
会議には毎回少なくとも8名以上の幹部が出席。それ自体が相互の闊達な討議と経営意思を共有する、意義あるプロセスであったと言える。

会議での検討資料

今の客層、新たに加える客層

斎藤ホテルの大きな特徴は、「斎藤駕籠屋」の名で行われている日帰りバスツアーにある。これによる、観光と長期滞在をセットにした集客がビジネスモデルの根幹をなしている。このため顧客利用形態の大半は「現役リタイア層=高齢者の長期滞在」だ。
しかし長期にわたり顧客の安定を図るためには、「新たな客層=ミドルシニア層」を取り込んでいく必要があり、そこをターゲットとして切り込んでいくことを客室整備の戦略テーマとした。
それはつまり、あえて「常連客・長期滞在型」から「一見客・1~2泊型」への進出を図ること、そしてそれにふさわしいグレードの客室にするということであった。

新客層開拓の戦略イメージ

10階フロアだけを新しいカテゴリーの客室に

改装を行ったのは65室ある客室のうち、10階の9室(10階の残る3室は近年改装済み)。客室の区分はそのままに、内部のスケルトン改装を行った。
これまである斎藤ホテルの客室とカテゴリーを明確に分ける必要などから、改装は1フロアに集中した。

斎藤ホテル平面図

新客室のコンセプトと試算

客室の商品づくりは、
(1)顧客に提供する「価値のコンセプト」
(2)それを建築的に表現する「部屋づくりのコンセプト」
(3)そこに盛り込むアイテムなど「コンセプトを支えるもの」
の3段階としてプランを進めた。

同時に、これら客室を販売していくにあたっての料金設定と想定稼働率、それにもとづく投資採算や資金の見通しなどの試算を行い、検討した。

斎藤ホテルコンセプトチャート
斎藤ホテル/プレミアムフロア「溪-Kei-」 斎藤ホテル/プレミアムフロア「溪-Kei-」

積年の課題、エアコン… 室外機の設置場所を吹抜けに新設

建物の外壁面はすべて平坦な造りのため、これまで空調室外機を設置する場所がなかった。客室の空調は窓の一部をふさぐ「ウィンドウファン」タイプ。せっかくの眺望が活かしきれないだけでなく、室内の印象を損ねる要因となっていた。
今回投資では建物内側の吹抜けにキャットウォークを設けることでこの問題を解消。今後行うであろう他階客室の改装にも生きてくる。

斎藤ホテル/室外機架台

そして完成した「“ 溪 ”-Kei-」

客室は大きく3タイプ。
【Aタイプ】広々としたプレミアム和洋室(46~56㎡・2~4名定員)
【Bタイプ】Aタイプより少しコンパクトな和洋室( 44~45㎡・ 2~5名定員)
【Dタイプ】ツインベッドの洋室(30~35㎡・1~2名定員)

斎藤ホテル/プレミアムフロア「溪-Kei-」 斎藤ホテル/プレミアムフロア「溪-Kei-」の茶器

あわせて造った木のデッキ「溪テラス」

リニューアルイメージをより印象付けるため、屋根のかかった木橋「五台橋」も望める場所に木造のデッキテラスを新設し、「溪テラス」と命名した。

斎藤ホテル「文殊テラス」
斎藤ホテル
斎藤ホテル
所 在 地
長野県上田市鹿教湯温泉
客室数
65室
竣工
2020年4月
2億円
2億円
設計監理
株式会社佐々山建築設計