株式会社リョケン

旅館経営の知恵

-リョケン研究員が
お届けする経営のヒント-

モチベーション(2)

コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」

人のモチベーションを高めるための方法について、前回に続き考えていく。

達成感を味わわせる

「達成感」とは、何かを成し遂げた時に感ずる満足感や喜びであり、これが次への心の活力となる。これを味わうための条件は二つある。まず達成すべき目標があること。達成感は目標とセットだ。ここで言う目標とは、必ずしも数字とは限らない。もう一つの条件は、そこに到達したことが分かることである。

 

達成感は、本来自分の内面で味わうものだと思うが、組織として人をやる気に導くには、「これを感じられる状況」を意図的に作っていくことだ。例えば、掲げられている目標が会社全体の、1年間の業績だけだとすれば、仮に達成されたとしても、大半の社員は自分の喜びとして感ずることはできないかもしれない。

 

大きな目標は、二つの観点で細かく刻むことだ。二つとは…「組織の中での分解」と「期間の分解」である。前者は全体目標を部門目標、個人目標に、といった具合に落とし込むこと。後者は年度目標を月、週単位に、さらに今日の目標に区切ることだ。長い旅の道中に「一里塚」を設けるのである。そうすることで、目標地点に到達するたびに、それを確かめ合って達成感を味わう機会ができる。これは売り上げなどの業績だけでなく、プロジェクトのような取り組みにも同じことが言える。

 

ただし、目標を細かくすると、得てして全体とのつながりが希薄になるという弊害もあるので、注意が必要だ。小さな目標の達成を確認するのはよいが、それ自体がマンネリ化して、いつしか会社にとって大した意味のない取り組みになっているケースも多い。こうなると、そのうち喜びでも何でもなくなってしまう。だから常に、「何のためにやっているのか?」という意義に立ち返ることが大切である。また達成さえすればよいのでなく、必ず反省点を振り返るようにしたい。そして「今度はもっと良いやり方にしていこう」とステップアップを織り込んでいくようにしよう。人も組織も、たわみのない「適度な緊張」を保つことが、モチベーションを維持する大事な前提なのである。

 

褒める、認める、位置付ける

褒めることは、達成感を増幅させることになる。褒める際のポイントは、「褒めてもらいたいことを褒める」ということだ。「褒めてもらいたいこと」とは、「本人が頑張ったこと」である。仕事においては「プロセス(努力)」と「結果(成果)」をセットで褒めるのが良い。

 

褒めるのが苦手な人もいるだろう。そういう人のためにあえて言うが、無理にぎこちなく褒める必要はないと思う。見出しの言葉は、語呂がいいのでこの順に並べたが、じつは「褒める」より重要なのは「認める、位置付ける」だと考える。褒めるという行為は、時には本人の努力とは無関係でも成り立つ。幼な子が歌をそこそこうまく歌った時、「じょうず、じょうず!」と褒める。もちろん悪い気はしないが、モチベーションにおいてより高度な意味を持つのは、自分の価値や仕事ぶりを「分かってくれている」ということ、そしてそれが部門や会社全体に貢献できている、という実感にあるのだ。

 

 

(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)

※当記事は、2019年5月に観光経済新聞に掲載されたものです。

 

 

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