旅館経営の知恵
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昇進
コラム「旅館はもっと良くなるべきだ」
昇進とは役職が上がることであり、名刺の肩書が変わるものと考えてよい。
昇進は、以前取り上げたハーズバーグの「動機づけ・衛生理論」(連載〈94〉モチベーション【1】)の中でも、積極的な「やる気」に結び付く「動機づけ要因」の一つに位置付けられている。つまり昇進は社員に「やる気」をもたらす重要な人事施策であり、昇進のタイミングは本人に一層のレベルアップを促す絶好の機会であると言える。
昇進に当たって一番大事なことは、本人にその役職相応の「自覚」を持ってもらうことである。また同時に、会社が公的にその地位を与えたことを周囲に認めさせることも大切だ。そういう意味で、昇進はきちんとした手続きを踏むようにしたい。辞令を渡す儀式を行い、掲示物などで社内に知らしめるといったことを行おう。なんとなくいつの間にか役職が変わっていた、などということがないようにしたい。また昇進のことは事前に本人に内示し、その責務、責任、また必要に応じて、与えられる権限や指揮命令対象となる範囲、そしてさらなる能力発揮への期待を伝えることが大切である。
ところで、会社によっては、職制上、ごく一部の人を除き、ほとんどの社員に役職らしい役職が付かないところもある。「ちゃんとそれなりの給与を出しているのだからいいだろう」ということかもしれないが、ここは社員の立場も考えていただきたい。
一定の責務を担う立場にある人は、対外折衝などの場面を考えると、それなりの肩書がほしい。また仕事上だけでなく交友関係においても、ある程度の年齢でそれなりの肩書がないと、世間的に肩身の狭い思いをするということにも思いをはせていただきたい。もちろんそれ相応の能力が備わっていることが前提だし、年齢や年功序列にこだわる必要はないが。
あえて組織に上下関係を作らず、フラット(平坦)な組織としているところもあるかもしれない。組織階層が何重にもなると、とかく判断が遅れたり活動性が鈍るといった弊害が起こる。それを避けるためにこういう組織形態が選ばれる。それはそれであり方だと思うが、その場合でも社員に会社として何らかの位置付けを与えることを考えたい。
この場合、「職能資格制度」とひも付ける方法が考えられる。職能資格制度とは、社員の職務遂行能力を、例えば10段階ぐらいの等級に格付けするものだ。ちなみに、この等級が上がることを「昇格」と言う。一般にこの等級区分は、俸給や昇進の要件など、あくまでも人事政策上の格付けであって、対外的にも社内的にも「○○さんは何等級」といったことが意識されることは少ない(主事、参事など、等級区分がそのまま肩書として用いられる組織も一部あるが)。しかしフラットな組織では、組織内での上下や責任範囲を意味する「役職」を設けない代わりに、この職能等級にひも付けて呼称(あくまでも「位」を表すだけだが)を設け、それを対外的な肩書とするのも方法であろう。
いずれにしてもここで言いたいのは、昇進なり昇格なり、本人への動機づけとなる「位置付け」を大事にしていただきたい、ということである。
(株式会社リョケン代表取締役社長 佐野洋一)
※当記事は、2019年7月に観光経済新聞に掲載されたものです。
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